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「常に言葉を現実に変えようとしてきた」

ミーク・ミルが 『Championships』に込めた想い、彼が手にした「勝利」とは

DECEMBER 14 , 2019

ペンシルヴァニア州フィラデルフィア出身のラッパー、Meek Mill(ミーク・ミル)が2018年11月にリリースしたアルバム『Championships』が2020年のグラミー賞「Best Rap Album」にノミネートされた。
この作品を聴く、そして語る上で、彼自身のバックグラウンド、人生、そしてアメリカの現状を知ることは欠かせない。

今記事では彼がこの作品を制作するに至るまでの経緯、この作品、グラミー賞について彼が語った言葉をドキュメンタリー、インタビューを参照しながら紹介していこうと思う。

Robert Rihmeek Williams(ロバート・ラミーク・ウィリアムス)
1987年生まれ現在32歳、ペンシルヴァニア州ノースフィラデルフィア生まれ。自身のレーベルDream Chaserの代表を務める。過去に4枚のアルバムをリリースし、最新アルバム『Championships』は全米一位を獲得、グラミー賞「Best Rap Album」にもノミネートされた。

アルバムのタイトル『Championships』が「様々な試練に打ち勝った(チャンピオンシップ)」という経験をテーマに名付けられているようにミーク・ミル、本名ロバート・ラミーク・ウィリアムズは幾度となく長く、耐え難い試練に襲われ、それらを乗り越えてきた。

刑務所からラップ・ゲームに舞い戻った彼の集大成とも言えるこの作品で、彼はプロジェクトを通じて、貧困、腐敗した司法制度、薬物依存といった数々の試練との戦い、それらに立ち向かう決意を語り、アフリカン・アメリカンとしてアメリカという社会に生きる中で当たり前に設定された「正義」とは一体何なのか、その疑問を私たちに投げかけている。

 

#FreeMeek

ラミークは2007年に逮捕されてから『Championships』をリリースする2018年までの11年間、刑務所・自宅拘留・保護観察生活を繰り返し、常に司法に監視される生活を送ってきた。彼は2007年に一体どのような罪状で逮捕されたのだろうか。

もう11年、この生活だ。
11年も保護観察なんてありえないと驚かれるけど、大した悪魔だとは思わない。アメリカの黒人にとってはこれが人生だ。現実なんだよ。 – Meek Mill (Free Meek)“

ラミークの実体験、司法制度のリアルを描いたドキュメンタリー「Free Meek」には、彼が戦い続けた約10年間が描かれている。まだご覧になっていない方は是非チェックしてみてほしい。

2007年1月、従兄弟たちと共に家にいたラミークは夜中に買い出しに出かけた。彼は銃を腰に携えたが、当たり前のように殺人が起きるフッドのストリートを警戒するのは誰にとっても当然のことだった。
家を出た途端、彼は複数の警察官に突如取り押さえられた。銃を所持していた彼だが、当然その銃を引き抜き、構えることはなかった。アメリカで警察に銃を構える行為は死を意味する。

しかし、その逮捕によって彼は脅迫、過失傷害、薬物の所持など19項目もの罪状を言い渡された。本来であれば彼は銃を所持して買い出しに出かけただけにも関わらずだ。しかし、貧困に悩まされていた彼の家族に弁護士をつけるお金はなかった。

テロリストでもなきゃ、19項目なんてありえない。でっち上げだ。– Meek Mill (Free Meek)”

金もない、コネクションもない、ただの20歳だ。誰が無実を証明できるんだ? – Free Meek “

この逮捕により、20歳の一人の若者は7ヶ月の収監、10年以上の保護観察処分を言い渡された。

10年以上の保護観察、それが罠だった。– Free Meek ”

7ヶ月の実刑を終え、彼はラッパーとして成功の道を歩んでいく。ジェイ・Z率いるロック・ネーションと契約を果たし、忙しく仕事を全うしながら、収監されるような重い犯罪とは無関係な生活を送っていた。

州間を移動する際には許可証を取ること、定期的な薬物検査、審問など様々な規律が課されるなど、彼は10年以上もあらゆる行動を判事に報告しなければいけなかった。ラッパーとして全米、そして世界を飛び回る彼にとって、この規律は厳しすぎるルールだった。そしてこの規律による罰則を決める権利は全て判事一人に委ねられているという。つまり、本来であれば法廷では誰もが平等に裁かれるべきだが、判事のモラルによって、不当な判決を受ける可能性もあるということだ。ラミークはまさに判事の恣意的な理由で有罪判決を受けることになる。

2017年11月に下された2年以上の実刑判決に対し、全米中で#FreeMeekのムーブメントが起きるなど、判事による信ぴょう性のない有罪判決に大きな批判が巻き起こった。この出来事によって世論は大きく傾き、フィラデルフィアの司法制度は大勢の人に問題視され、結果的にラミークは釈放されることに。彼の収監により起きたムーブメント、裁判に伴い、フィラデルフィア警察の中には多くの汚職警官が存在していたことが明かされ、貧困地域のアフリカン・アメリカンに対し不当な逮捕を繰り返していたことも明らかになるなど、不平等な制度に縛られていたラッパーは、今度は制度自体に牙を剥いた。

(DailyPhilly)

俺は司法の改革にこの身を捧げる。誰も不当な理由でムショ行きにはさせない。約束だ。– Meek Mill (Free Meek) “

今年8月に公開された「Free Meek」ではアメリカの成人逮捕者、刑務所に収監されているのは223万人、執行猶予、仮釈放中などの社会内監視下に454万人もの人が置かれていると語られている。つまり、これはラミークだけの物語ではなく、ごく一般的に存在している物語だ。彼のように不当に罪状を言い渡された後、釈放されることなく刑務所に閉じ込められた人、特に貧困地域に住むアフリカン・アメリカンはどれほどいるのだろうか。

俺は幸運なほうだ。多くの人は声も上げられない。
俺は運動の顔でもなんでもないけど、声なき人々を代弁したい。– Meek Mill (Free Meek) ”

そんな2018年4月に釈放された彼が製作に取り掛かったのがこの『Championships』。当然だが作中にはこの出来事の影響が色濃く表れている。

“ Pray my niggas stay free
Made a few mistakes but this ain’t where I wanna be
Before I’m judged by 12, put a 12 on my V
Told my niggas, “I need you”
Stay up, I know these times ain’t true
Real life, what’s free?

仲間たちよ、自由であれ。
何度か間違いを犯した、でもこんなの間違ってるぜ。
審判に裁かれる前に、車に乗ってエンジンをぶっ飛ばす。
仲間に伝えたよ「お前が必要だ」って。
倒れるなよ。まだ真実はどこかにあるから。
リアル・ライフ、なぁ自由ってなんだ?- What’s Free? “

“ Tryna smoke the pain away, they lock us up for smoking
Put ‘em on probation, lock ‘em up if you ain’t perfect
Victim to the system like a rain drop in the ocean
They closin’ all the schools and all the prisons gettin’ open

“ 痛みから逃げるために葉っぱを吸えば、あいつらは俺らをムショ送りにする。
保護観察にしておいて、少しでも間違えるとまた逆戻りだ。
システムの犠牲者はまるで、海に落ちる雨粒のように溢れてる。
あいつら学校から俺たちを追い出して、刑務所の扉を開くのさ。- Championships “

アメリカ中に存在するラミークのような若者を2度と生み出さないために、彼はラップを通じて、制度に縛られた10年以上もの経験を伝えている。

常に言葉を現実に変えようと努力してきた。
ずっとそうやってきた。もし俺の音楽を追いかけてくれていて、昔の曲を思い出せば、過去に俺が発した言葉、求めていたものは実現してる。 AP




薬物依存との闘い、グラミーへの想い

彼がこの作品で語っているのは司法制度についてだけではない。
特筆すべきはそして薬物に依存していた過去、ドレイクとのビーフ・和解についてだ。

大物ラッパーらしく派手に生きていた俺が全然眠れなかった。何年もだよ。不安で夜中に目が覚めた。– Meek Mill (Free Meek)”

長年にわたる保護観察、自宅拘留のストレス、不安から薬物依存に陥ったと語るラミーク。先日公開されたインタビューでも、その深刻さを語っていた。

一日に10錠もパコセット(鎮痛剤)を飲んでた。死と隣り合わせだった。マジだよ。

薬物依存と並行して起こったドレイクとのビーフが始まった理由について「あの頃は自分を抑えることができず、誰にでも食ってかかってた。」と語るなど、少なからず関係があるのかもしれない。薬物を断った彼とドレイクは現在では友好な関係を気づき、” Going Bad “で共演。この作品は彼のApple Musicで最も再生されている楽曲で、アルバム中で最もヒット・ソングだと言えるだろう。

“ I could fit like 80 racks in my Amiris (80 racks)
Me and Drizzy back-to-back, it’s gettin’ scary (Back-to-back)

Amriのパンツに8万ドルをピッタリ詰め込んで (8万ドルさ)
俺とDrizzyの応酬さ、恐ろしくなってきただろ (やられたらやり返すんだ) – Going Bad “

以上のような歪んだ司法制度という到底太刀打ちできそうにもない大きな試練、副次的に現れた薬物依存、仲間との対立などの様々な問題に立ち向かい、それらに打ち勝った、その勝利を示したのがこの作品だ。
フィラデルフィアの恵まれない環境で生まれ、20歳で逮捕歴を背負いながら、ラッパーとして社会のリアル、問題を堂々と提起し、実際に変革を起こした。しかしこの勝利はラミークだけの勝利ではない。同じように貧困地域に生まれ、社会の「当たり前」に不当に扱われてきた人々にとっても勝利である。

それらの背景を知っていれば、この作品がグラミー賞にノミネートされたという判断を否定する人は多くないだろう。ラミークはノミネートについて以下のように語っている。

俺は賞賛みたいなものばかりには集中しないようにしてる。
俺はストリート・ラッパーだし、俺たちは「賞にノミネートされる」タイプの人間じゃないんだ。
だから自分の考えや、信念、エナジーを誰かのジャッジ(審査)に委ねて、その結果によって自分のスピリットを変化させないようにしてる。(結果によってガッカリしたり、浮ついたりすることがない)AP

彼は活動家である前にラッパーである。
作中には” Respect the Game “のような、どんな風に「金」と付き合っていくべきか、どんなマインドで毎日を生きるべきか、ストリートの「ルール」を私たちに伝えてくれている楽曲もあるなど、あくまでその出自を忘れていない。
「誰かのジャッジに自分の考えを委ねない」と語るように、彼はあくまでストリートに生きる大勢のうちの一人として勝利を手に、今後も声を上げ続けてくれるだろう。

“ Rule number one, never count your homie pockets thinkin’ you deserve it
Rule number two, never trust a bitch that’ll fuck you for some purses
Rule number three, save you some of that money, shit you better stop splurgin’
‘Cause when it’s all said and done and you back at the bottom, they gon’ treat you like you worthless
Respect the game

ルール・ナンバーワン。ホーミーの金をあてにするな、自分にその資格があると思ってな。
ルール・ナンバーツー。お前の財布のためにファックするビッチを信頼するな。
ルール・ナンバースリー。金は貯めろ。下手なことに金を使わない方が良いから。
だって全てをやり終えて、どん底に落ちてしまったら、あいつらお前を用無しかのように扱うぞ。
ゲームをリスペクトするんだ 。- Respect the Game “

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