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「俺たちはただひたすら平等を求めているだけなんだ」| 世界をリードするポイントガード、Damian Lillardの想い

June 21, 2020

ミネアポリスでの白人警官によるGeorge Floyd 氏の殺害事件を皮切りに、アメリカでは連日デモや抗議活動などが起こっている。さらに、この事態に便乗して、略奪行動や破壊行動に走る人々、暴力を煽り、デモ隊の危険なイメージを作り上げようとする扇動者と呼ばれる人々なども出現しており、一体、誰が何に対して怒りをぶつけているのかわからない状態になってしまっている。特に我々のように遠く離れた地でニュースやSNSなどを通してこの事件に触れている人にとっては、より真実が見えづらい状況なのではないだろうか。

そんな中、この混乱を落ち着かせ人々を先導すべく1人のスポーツ選手が声をあげた。そのスポーツ選手とは、アメリカのプロバスケットボールリーグ、NBAを代表するポイントガード、Damian Lillard(デイミアンリラード)である。今回彼は2020年6月10日にDame D.O.L.L.Aという彼のラッパー名義の元、新曲「Blacklist」をリリースした。

危険・要注意人物リストとしてのBlacklistと黒人達(Black)のリス(List)とという2つの意味がかけられた題名を冠したこの曲で彼は、正に黒人差別の問題に対する想いを語っている。ビートがなく、ピアノのサウンドのみが響くシンプルなトラックの上で約3分間彼は淡々とラップする。その声の裏には怒りや悲しみだけでなく、同時に希望や激励といった前向きな感情も感じられた。

以下で歌詞を一部抜粋し、その解説をしていきたいと思う。

まずはHookである。

“ As a brotha with a good heart, I say “Fuck you,” if you racist Or whites stayin’ quiet, you disablin’ the changes And fuck bein’ famous, tired of watchin’ us complainin’ Cops kill a brother, get released after arraignments”

「心の優しい男として、もしお前が差別主義者、もしくはただ黙っている白人であるならば、、俺は「糞食らえ」と言いたい。お前らは世界の変化を止めている。俺が有名人かどうかなんて関係ない。もうただ文句を言っているだけの現状には飽き飽きしている。仲間を殺した奴ら(警察)はいつも罪に問われず釈放されている。」

Dame D.O.L.L.AことDamian Lillard は子供に悪影響であるという理由からほとんどcurseしない、悪い言葉を使わずにラップすることで有名である。そんな彼が、この曲では冒頭から差別を許している人たちに対して“ fuck you ”「糞食らえ」と言っている。これが意味することは何なのか、それはとりわけ怒りであろう。さらにfuck bein’ famous ”「俺が有名人かどうかなんて関係ない」からは、彼はいくら自分が有名で周りからリスペクトされていようとも自分も一人の黒人であることに変わりなく、またこの発言でどんな批判を受けようとも変化を起こすためならば全く気にしないというスタンスが感じられる。NBAでの振る舞いを見る限り、彼ほど芯の強い男はいない。そんな男が口汚く罵しり声を上げるほど、今回の事件には遺憾に思う部分が多々があるのだろう。

ではこの怒りの矛先は一体どこに向けられているのだろうか。それが以下のパートで述べられている。

“ We love ourselves, we don’t hate white people We just strivin’ for equality, acknowledge me ”

「俺たちは自分達のことを愛してる。そして俺たちは白人達のことを嫌ってなんかいない。俺たちはただひたすら平等を求めているだけなんだ。わかってくれ。」

ここからわかるように彼らは全ての白人に対して憎しみ、怒っているわけではない。恐らく差別を受けてきた黒人達は、何時まで経っても差別がなくならず平等な機会が自分達に与えられないこの世界の状況そのものに怒っているのである。このパートはこれまでの一連の黒人差別の事件を整理するためにも非常に重要な役割を担っている。この記事の冒頭でも述べたように、メディアや暴動者、略奪者、扇動者の影響によってこの事件の対立関係に関して誤解を生んでしまっていると考える。そのため彼はこのパートで改めて、人々の誤解を解き、正しい認識を共有しようとしているのだ。つまりこの発言は、皆の意識を統一し、共に問題解決へと進んでいこうとする、いわば舵きりのための一声とも言える。

歌詞の順番が前後してしまうが、以下のパートにて彼は現状を変えるための行動に関しても示唆している。

“ And if a teammate of mine do underage I’ma snitch, me and you ain’t a fit I ain’t gon’ sit or convince myself that I’m bein’ loyal or mad at you So why these good cops won’t speak on the bad apples? ”

「もし未成年のチームメイトが悪いことをしていたら、俺はチクるぜ。俺はそういうのが気に食わない。ただ座って過ごしたり、仲間だからって同情したりすることもなければ別に怒りもしない。なのになんで善良な警察たちはロクでもない警察たちに対して何も言わないんだ。」

“ bad apple ”とは直訳すると「悪いリンゴ」や「腐ったリンゴ」なのだが、「悪影響を与える人」であったり単純に「悪いやつ」を表す表現としてしばしば使われる。つまり、間違っていることは間違っている、そしてそれをしっかりと包み隠さずに伝えることが重要であるというのが彼の主張である。フックにもあった通り、差別主義者でなくとも、ただ黙って見過ごすという行為は差別を許しているのと同じことであり、また警察も仲間に同情し、間違いを指摘しないがために人を殺めた警察が罪に問われず釈放されてしまっている。要するに彼は物言わぬ多数派に対してアクションを起こして欲しいと呼びかけているのだろう。確かに間違いに対してしっかりと向き合い指摘するという行為はシンプルであるが、多くの人が実行できていないことである。もしかするとあなたも、彼の言うように目の前の差別を見過ごしその差別に間接的に加担してしまっている可能性があるかもしれない。

この曲においてDamian Lillard は、まるで彼が普段バスケットボールコート上で2mを超える大男をまとめ、チームを勝利に導くように、混乱しバラバラになった我々の意識をまとめ差別のない平等な世界へと導こうとしている。怒りや不安などの様々な感情がある中で、冷静に人々を諭そうとするその姿勢はまさにポイントガードのロールそのものである。彼のこういった姿勢と、プレイを鑑みれば、彼こそが世界をリードするポイントガートと言っても過言ではないのではないだろうか。ラッパーとしてスポーツ選手として、そして一人の人間として今後の彼の活動には注目していきたい。(ポイントガード =バスケットボールにおいて、率先してチームを動かし、試合をコントロールするポジションのこと )

DAMIAN LILLARD

Credit

Writer : じょん

About : 学生時代に音楽や洋服を中心としたブラックカルチャーに魅了され、以来継続してその愛を深めてきた。現在では会社員として働きつつ、文化発信を目標に音楽ライター活動をしている。1番好きな音楽の聴き方はダンスである。(@john_renya

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