まず騒音とは、世間や社会情勢、彼の身の回りの日常(ルーチン)のことを指している。なぜなら、彼は日常の生活に満足しておらず、また、そのような生活に無意識にはまっている自分に嫌気がさしていると常々語っているからである。例えば、『Innerspeaker』に収録されている「Desire Be Desire Go」の歌詞でにも“ Every day, back and forth, what’s it for? – 毎日が繰り返し、何のために日常はあるんだ? ”と日常のルーチンを拒絶する想いが語られている。
Curse indulgence and despise the fame 呪いにふけることと名声を嫌うことをさ
There is a world out there そこには世界が広がっているのさ
サビで“ So don’t be blue There is another future Waiting there for you – 後悔しないで欲しい、そこには明るい未来が待っているから ”とパートナーとの別れをポジティブに歌う本曲。元パートナーであることMelody Prochet(ソロプロジェクトMelody Echo’s Chamberのボーカル)との破局が少なくとも本曲に影響を与えていると言っていいだろう。
後半部分では“ They say people never change But that’s bullshit, they do ”と歌っており、人は時間と共に変化するものであると認めたが故に、俺たち(KevinとMelody)がやり残したことはない(=未来はない)と歌っているのではないだろうか。 特に注目したいのは、上記の歌詞の部分。Tame Impalaとして成功を収めたが故に「あなたは変わったよ」とパートナーや周りから言われることがあり、そのような声に対して今までは否定・遮断を続けてきた、と語っている彼だが、この部分の歌詞では、結局自分という人間は名声から逃れることはできない人間(別バージョンの自分)に変化してしまった、ということに気づいている。だからこそ、曲タイトルが「Yes I’m changing」なのではないだろうか。
4.Eventually
I know I always said 俺はいつも口にしている
That I could never hurt you あなたを傷つけるようなことは決してできなかったと
Well, this is the very, very last time でもまさに、まさに最後で
I’m ever going to 傷つけることになってしまったのさ
まさにパートナーとの別れを歌った本作。今までパートナーを決して傷つけてこなかった彼だが、最終的に(Eventually)傷つける(hurt you)こととなる。本曲においても“ But I know that I’ll be happier And I know you will, too – きっと別れた方がお互い良かったのさ ”と歌っており、別れをポジティブに受け止めているように読み取れる。
「Let It happpen」のメッセージからも分かるように、彼はこのような辛い経験(今回で言えば失恋)は、あくまで人生という流れの一部に過ぎず、その流れに身を任せることで人生という物をより豊かに幸せにできると歌っているのではないだろうか。
9.Disciples
And I could tell you’ve changed あなたは変わったわ
By the people around you 周りの人々(ファン)によって
I used to take the long way 昔はよく遠回りしたわ
Just so I could walk past your door あなたの家のドアを通るためにね
I used to wait outside よく外で待ってたわ
But I guess I won’t anymore でももうそんなことはないわ
前半部分の歌詞から本曲はKevin のパートナーの視点で描かれた曲であることが分かる。“ I wanna be like we used to But now you’re worried whose audience will lose you ”という歌詞から、パートナーは昔のように戻りたいが、あなた(Kevin)はそれによってファンを失うことを恐れている、と歌っている。 前述したが、Tame Impala として成功を収め、名声を得ることができた彼と距離感を感じるパートナーの気持ちを歌った本曲は、彼女から見てもKevin という人間は変化したことが読み取れる。昔は遠回りして通っていたKevin の家も、もう行くことはないという描写から、彼女自身も変化を受け入れたことを表しているのではないだろうか。
11.Reality in Motion
There’s no one else around you あなたの周りには誰もいない
Not that I was waiting, vision ever fading そんなあなたを俺は待ってたわけではない 俺たちの将来は変わるのさ
Heading for the deep end 深い終わりに向かって
Soon as I remember, baby, I surrender 思い出したら負けてしまうんだ、ベイビー
I just need to breathe out だから俺は深く深呼吸をする必要がある
Decisions are approaching, reality in motion 決定は近づいている 現実は流れているんだ
本曲では、パートナーとの失恋をきっかけに変化した彼自身の前進する姿が歌われており、新しい愛への関心や音楽に挑戦するコンテクストが含まれている。というのも、彼はGenius のインタビューの中で「数年前にLA で聞いたBee Gees の曲が忘れられないんだ。あれこそが俺がサイケに求めている音楽だよ。」とTame Impala の新しい音楽の方向性とそれに挑戦する姿勢を示唆しているからだ。新しいスタイルの音楽をファンが受け入れてくれるかという不安や自己懐疑心があるものの、自分の正直な気持ちにしたがって(流れに身を任せて)前進することを決心したのではないだろうか。実際、アルバムのラストを飾る「New Person, Same Old Mistakes」のサウンドは、ディスコシンセ・ポップ路線へシフトしていることが伺える。
I wouldn’t say it’s a breakup record in the literal sense. It’s more about this idea that you’re being pulled into another place that’s not better or worse. It’s just different. And you can’t control it. There are these currents within you.