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Ⅰ. Flight of the Navigator

Album : Because The Internet
Track : 14
Year : 2013
Produced by : Ludwig Göransson & Childish Gambino

Childish Gambino (チャイルディッシュ・ガンビーノ)の2012年リリース『Because The Internet』は楽曲の他に「脚本」が楽曲の間と間に折り込まれる形で描かれたストーリー型のコンセプト・アルバム。

ここまで(Screen Play 3-3)の脚本・ストーリーでは、周りの人間を信頼することができず、精神的に追い詰められた主人公(The Boy)が、家の中で一人、「白い粉」を飲み込むことで、意識を失うシーンが描かれていました。
そんな” 死 “を思わせる描写から、14曲目 ” Flight of the Navigator “に続くわけですが、この楽曲は、意識を失ったボーイの夢の中深い意識の奥からの「声」を描いた作品。

イントロ、深い意識の奥で、ボーイはこう語ります
「俺には夢があったんだ。空を飛んでこの世界から飛んでいく、そんな夢がさ」
「俺は全ての星々、惑星に出会った。全てが俺自身を作り上げてる」
タイトルの” Flight of the Navigator “は1986年に公開された同題の映画にインスピレーションを受けているとされています。
この映画では、一人の” 少年 “が宇宙を旅したり、時空を旅することが描かれています。

ボーイは、まさにこの映画内で描かれていたことをイントロで語っているのですが、このラインから彼には「今生きている世界から飛び出したい」こと。「自分が広い宇宙のほんの一部である」という思いがあることがわかるはずです。彼が死を意識していることが明白にわかります。

また、バース1の後、彼はこう語ります「Why Try at all? Why bother? – なんでこんなにも頑張ってるんだ?何が嫌なんだよ?」と。
ここまでの脚本・ストーリーで語られている通り、彼は本当の愛情を求めながらも、それを手に入れることが出来ません。
そんな誰からも本当の意味で愛されない、疑いに包まれたストレスだらけの生活で「頑張って」生きていて何の意味があるんだ?という問いかけに聞こえます。
そんな「死の肯定」とも思えるラインが続いた後、フックで彼はただ一言だけこう語ります。
「Just hold me close – ただ抱き寄せて欲しいんだ」
と。彼は何だって手に入れることができます。丘の一番上に立つガラス張りの豪邸に住み、誰も見たことのない高級車に乗り、クラブのVIPルームに入ることもできます。しかし、彼が死を目前に求めたのは、やはり「愛情」なんですね。お金だっていらないし、どんな財産もいらない、ただ抱きしめてくれる存在が彼には必要だったと。死と現実の間を彷徨う彼の心の声が、儚げなギターの音とともに語られています。


[Intro]
“I had a dream
「俺には夢があったんだ

I had a dream I was flying over all of us
空を飛んでこの世界から飛んでいく、そんな夢がさ
(タイトルのFlight of the Navigatorから。1986年公開の少年と宇宙をテーマにした映画)

There were so many pretty people, so many pretty faces
そこには美しい人々、美しい見た目の人々が無数にいて

I talked to some birds, I fell in love again
小鳥たちと話したんだ、また恋に落ちてしまった

And none of this ever ended
終わりを迎えたものなんて何一つないのに

Everything just kept going, and going, and going
何もかもあの頃のまま、ただ時間が流れていくだけ
(映画『Flight of the Navigator』では、少年が時空を超えて8年前に戻るシーンがあります)

And even when you laughed, you cried
君が笑っていた時も、君が泣いていた時も

And even when you were sad, you were really happy
たとえ君が悲しんでいた時だって、君の心の奥は「幸せ」なんだ

Cause you were here, and I got to meet every star
だって君はここにいたから。俺は全ての星

Every planet, everything that made me
全てに惑星に出会った、全てが俺を作り上げてる
(アメリカの天文学者カール・セーガン博士の「私たちは皆、星屑で出来ている」という言葉を思い出します。
私たちは皆、原子の組み合わせによって作られています。惑星だって、星だって、原子の組み合わせであり、私たちを作り上げているものと何ら変わらない。映画『Flight of the Navigator』にも同様のシーンがあります)

And we all kissed, and became the same
俺たちがキスをした時、二人は一つになったんだ

We became the same, we became the same.”
俺たちは一つになるのさ、二人は一つになったんだ」
(ボーイは死の直前、愛する女性とのキスを思い出しています。
また死後の世界では、人種・性別・年齢といったこの世界でのカテゴリー・ジャンル分けは消え去り、誰もが同じ存在に生まれ変わるという考え方も出来ます)

 

 

[Verse 1]
Who would have thought this? We almost lost it
誰がこうなるなんて想像した?俺たちはもう失いかけてる
(ボーイの命は失われようとしています。彼は自身が死んでしまうことで、愛する女性を永遠に手放してしまうことを浮かべています)

When you lie inside darkness, it’s hard to see
深い暗闇の中で君が嘘をつけば、もうこの目には見えなくて
(Screen Play 4で語られますが、ボーイは、財産を目当てに近く友人や女性は「自分が亡くなっても構わない」と思っていると発言します。命が断たれ、棺の中、暗闇の中で眠る彼には、もう仲間たちの「嘘」を見破ることが出来ません)

And we sleep in tradition, keep ‘em off in the distance
俺たちは決められた通り眠りについて、あいつらと距離を置く

To tell you that I haven’t been
君に伝えておくよ、俺はずっと…

 

 

 

[Pre-Hook]
We are all cold water
俺たちはみんな冷たい水さ
(” cold water on something “で「水をさす」という意味があります。彼の思いに拒否を示す友人・女性が浮かびます。
また人体の60%が水で構成されていることを言っているようにも思えます)

Why try at all? Why bother?
何でこんなに頑張ってるんだ?何が嫌だっていうんだよ?
(彼は本当の愛情を求めながらも、それを手に入れることが出来ません。そんな愛情の欠けた、ストレスだらけの生活で「頑張って」生きていて何の意味があるんだ?という問いかけに聞こえます)

 

 

[Hook]
Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
ただ抱き寄せて欲しいんだ、ダーリン

 

 

[Verse 2]
Who would have dreamed this? You couldn’t mean this
誰がこうなるなんて想像した?君はこの関係に本気になれなかったんだ

It would be some type of meanness to where you are
君がどこにいるか、それはある意味重要にもなるんだ
(一つ前のラインから。君のボーイへの思いは「本気」ではないため、浮気をしているのではないか。と)

‘Cause I don’t know where to go
だって俺はどこに向かっているかわからないから

And no one else seems to know
誰一人としてわからないみたいだ

 

 

[Pre-Hook]
We are all night’s fallen
俺たちはみんなこの夜に落ちていく
(誰もがそれぞれの憂鬱や、悩み(夜)に心をすり減らしている)

Why try at all? Dark calling
それなのに何で頑張るんだ?暗闇が呼んでるのにさ
(” 暗闇 ” = 死を豊富とさせます)

So we’re left alone, no one left to call upon
最後にみんな一人取り残されるんだ、声をかける人はもういない

Be still now, broken bones, as I travel on
骨は折れてるみたいだ、まだ旅の途中なのにさ
(もう彼には、この先の旅(人生)を生きていくほどの力が残されていない)

 

 

[Hook]
Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
ただ抱き寄せて欲しいんだ、ダーリン

Hold me close, my darling
近くに抱き寄せて、ダーリン

Just hold me close, my darling
ただ抱きしめて欲しいんだよ、ダーリン

So we’re left alone, no one left to call upon
みんな一人取り残される、もう誰もいなくなってしまった

Be still my broken bones, as I travel on
骨は折れてるみたいだ、まだ旅の途中なのにさ

Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
Just hold me close, my darling
ただ抱きしめて欲しいんだよ、ダーリン

 

 

[Outro]
Cold wa-
Cold wa-
冷たい水…

 


NEXT : SCREEN PLAY 4

 

 

BECAUSE THE INTERNET
ALL STORY (SCREEN PLAY) & ALL SONGS

SCREEN PLAY (STORY) PART 1

Ⅰ. Crawl

SCREEN PLAY 1-2 

Ⅱ. Worldstar

SCREEN PLAY 1-3

Dial Up (No Lyrics)

Ⅰ. Worst Guys (Feat. Chance The Rapper)

 

 

SCREEN PLAY PART 2

Ⅱ. Shadows

SCREEN PLAY 2-2

Ⅲ. Telegraph Ave.

SCREEN PLAY 2-3

Ⅳ. Sweatpants

SCREEN PLAY 2-4

V. 3005

 

 

SCREEN PLAY 3

Playing Around Before Party Starts (No Lyrics)

Ⅰ. The Party

SCREEN PLAY 3-2

Ⅱ. No Exit

SCREEN PLAY 3-3 (Death by Numbers)

 

 

Ⅰ. Flights Of The Navigator

SCREEN PLAY 4

Ⅱ. Zealots Of Stockholm

SCREEN PLAY 4-2

Ⅲ. Urn

SCREEN PLAY 4-3

 

Ⅰ. Pink Toes

SCREEN PLAY 5

Ⅱ. Earth: The Oldest Computer (The Last Night) (Feat. Azelia Banks)

SCREEN PLAY 5-2

Ⅲ. Life: The Biggest Troll (Andrew Auernheimer)


 

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