タイラー・ザ・クリエイター『IGOR』、オッド・フューチャーとナンバー1アルバム  | interview

2019年5月にリリースしたアルバム『IGOR』が、キャリア初の全米ナンバーワンを達成した Tyler, The Creator (タイラー・ザ・クリエイター)。アップル・ミュージック「Beats 1」の Zane Lowe(ゼイン・ロウ)との対談・インタビューから、印象的な質問を抜粋して紹介。『IGOR』のコンセプト、過去の作品、タイラー擁するクルー・オッド・フューチャーについて、趣味の自転車についてなど、音楽のみならず、私生活についても明かしてくれています。

『IGORについて』

Zane Lowe : なぜあの衣装をチョイスしたの?どこからアイデアを得たんだい?

Tyler, the Creator : ただクールだと思ったから。とりあえずウィッグを売ってる店に行って、ブロンドのものを選んだんだ。まず角刈りの短いウィッグを被ったんだけど微妙でさ。だからもっと長いやつにしたんだ。どちらにしろ前髪が揃ってるやつが良かったんだよね。自分の描いたキャラクターをイメージして作ったのさ。黒い髪のボブヘアーで、タートルネックを着て、サングラスに金の歯って感じのイメージだったんだけど、気が変わってね。

Z : そのイメージは無意識に作ってるものなの?それとも何かからインスピーションを受けてる?

T : いや、ただクールだと思っただけさ。身長が高くて、スリムでスーツを着て、ブロンドの髪。黒人たちは地毛でブロンドはあり得ないだろ。ブロンドが俺のイメージにピッタリだと思ったんだよ。

Z : なるほどね。変な質問だけど、あるキャラクターになりきると、人は本来の自分とのギャップ・「違和感」を感じることがよくあるみたいなんだ。スーツを着たりしてそういう違和感を感じた?

T : んーないね。いつも通り。

Z : 周りの人たちのリアクションは変わった?ショーの観客もいつも通りだった?

T : ショーに出た時は、自分のゾーンに入ってるからな。「かましてやる」って感じで。ただ最近、みんなの「ハイ」の挨拶が以前と違うかも(笑)。

Z : もう山ほどアルバムについての質問を受けてるだろうけど、『Flower Boy』では、質問を作中で投げかけて、答えを模索しているようなアルバムだったよね。私が『IGOR』で感じたのは、幼い頃の話をしているように思えたんだ。かなり悲しい感じのアルバムだったよね。そして君は「答えを必要としていない」ような気がしたんだけど、どうかな?

T :  『IGOR』は間違いなく「全ての感情」が詰まってる。朝起きて感じた感情とか、その都度の思いを曲にしてるんだ。そうしたら自然に時系列順に作られていったね。

Z : どの曲を最初に製作したんだい?

T : ” EARFQUAKE “。2017年の5月に作ったんだ。

Z : 確か、その曲は自分の作品に使うために作った曲じゃなかったんだよね?

T : そう。俺はその時、他のアーティストに渡すためのポップ・ソングを書きたくて。

Z : ” EARFQUAKE “はストレートなラブ・ソングだよね。このアルバムはきっと心の内を明かした作品なんだろうってリスナーに予想させるようなアルバムの始まりだった。

T :  そうだね。まさに80年代のポップスって感じだよ。

Z : まさに「理想の恋」に「理想の失恋」って感じだよね。笑

T :  音楽だけじゃなくて、80年代の雰囲気が好みになったんだ。昔は嫌いだったんだけど、段々自分の好みになってきてね。その年代で、好きな曲を見つけたりしたからかな。

Z : あの作品で興味深かったのは、ゲストを数日後に明かした後、ファンたちが驚いていたことも挙げられるよね。「あの人も、あの人も、参加してる!」って感じで。『Flower Boy』はスーパーゲストたちが全面に押し出されていたけど、『IGOR』では録ったものを溜め込んで、混ぜ合わせたような印象を受けたんだ。

T : 正直言うと、俺が曲を台無しにしたんだ。俺は自分の声が嫌いだし。でも、俺は自分を才能のあるプロデューサーだと思ってるんだよ。

Z : そうかな。だって君は現代の音楽界の中でも美しい声を持ってるし、印象的な声を持ってるって広く認識されてるよね。

T :  確かにそうなんだけど、もしスティービー・ワンダーみたいな曲を書いて、自分で歌いたいと思っても、声のせいで実現できないことがある。まるでモンスターみたいに聞こえちゃう。だから、ファンたちはみんなラップしか俺に求めないんだ。でも「得意でもねえのに」って思われながら、得意げにそれをやり続けるときっとヘイトされるだろうし。

俺は自分の声がマジでイケてるってわかってるけど、「他の歌い方もできるぜ」って見せてやりたい気持ちもあったんだ。まるでフリースローも得意だけど、ドリブルもイケてるバスケ選手みたいにさ。そういう理由で『Flower Boy』では、一旦ファンたちを黙らせて、そのあとに好きなことだけを語った。レックス(Rex Orange County)が1分20秒歌って、ようやく俺が登場する曲を作ったってワケさ(” Boredom “)。

Z : 今、君はこの作品をリリースし終えて、自分がより良いプロデューサーになったことを自覚している風に思えるんだけど、きっとまた次の作品に向け、プロデュースができる準備がすでにできてるよね。

T : そうだね。それがまさに俺のやりたいことだし。ここから2年間は多分服の製作や、動画の制作(Golf Wang)をする予定だけど。」

Z : さっきも言ったけど、このアルバムはとても悲しい内容になっていて、失恋する内容が描かれているよね。このアルバムを製作する上で、一番悲しかった瞬間・体験があったりするのかい?このアルバムを製作する原点になった体験のようなものがある?

T :  歌詞の話だよね?、俺は” Puppet “が一番ダークな側面を表してると思うよ。これは友達にも言われた話なんだけど、” Puppet “の最初のヴァースは捉え方によっては恋愛じゃなくドラッグに依存してる人を表したリリックにも聞こえるんだ。だからリリックはリスナー1人1人のモノさ。

Z : 全体の作品が出来上がって、まとめて見てみたときに、そういった一貫した感情 が作品に現れていることには、作品を作った君でさえ驚くことはある?

T :  そうだね。でも俺はただ正直にこの心から表現してる。このアルバムは俺が初めて「クールであろうとしなかった」アルバムなんだ。ただ心の中にあるものを、そこに表現したんだよ。それが結果的に” 反復的な表現 “に見えるんだろうね。

Z : 『Wolf』でも正直な気持ちを明かしていたよね。どんな風に育ったとか、家族の話とかさ。

T :  ああ。でも70%くらいはあれをクールだと思ってくれるかもしれないけど、30%は「黙れよタイラー」って気持ちになると思うんだ。というより、俺は24歳になるまで「叫ぶ」のがクールだと思ってたんだ。マジだよ。24になって、「なんで俺叫んでばっかだったんだ?」って気づいたんだよ。マジでクソだよな。

それはインターネットで「アホなやつ」を演じるのを止めようと思ったのと同じことでさ。そうすれば、きっとみんな俺の本当の才能に気づいてくれるだろうし。俺の音楽をちゃんと「アート」として受け止めてくれると思った。でも24まで気づかなかったんだぜ(笑)。もう28だぜ (カメラにポーズ)。マジで怖いよな。

Z : 何が怖いの?

T :  怖いんだよ、太ったり、老けて醜い姿になったりするのが。俺は人が金持ちになって、好きなもんを好きなだけ食いまくる奴らを見てきた。夕方に起きて、ハッパ吸って、飯食って、ハッパ吸って、飯食って。って生活を繰り返して、何もしないんだ。運が良いことに俺はチャリに乗るのが好きだからマシだけどさ。でも多くの人がそうなっていくんだ。

Z : 君はハッパを吸うんだっけ?

T : 「全く吸わないね」

Z : 吸ったことは?

T :  前にあるけど、最後にやったのは19歳?とかかな。

Z : あまり生産的な経験じゃなかったのかい?

T : まあ、俺には合わなかったね。

Z : お酒は飲まないの?

T :  1度も飲んだことないよ。メシはまだ5歳児みたいに食いまくるけどな。俺はアクティブなタイプだから健康でいられてるね。

Z : いつもロサンゼルスで偶然会うとき、絶対に自転車に乗ってるよね。

T :  自転車はマジで楽しいんだ。なんでかはわからないけど、ゴールデン・アワーに、太陽の下、完璧な曲を聴きながら走ったら、マジで超ハッピーになれるんだ。みんな乗った方がいいよマジでさ。

Z : 今までで一番最高だったライドは?自転車に乗って過ごしたベスト・デイを覚えてる?

T : 2日あるね。2017年のツアー、セント・ルイスにいたんだ。めっちゃ寒くてさ。LAは1年中24時間あったかいから、俺たちにとってはかなり寒くて。近くの公園まで走ってたら、木に葉っぱが一つもついてなくて、全部下に落ちてたんだ。落ち葉が集められてて、マジでびっくりしたんだよ。「マジかよ」って感じでさ。今まで一度もそんな風景見たことなくて。LA出身だから見たことなかったんだよ。違う色の葉っぱが落ちて、そこに集められてる光景をさ。だからその葉っぱにダイブしたり、仲間たちとはしゃいだね。どっかに動画があると思うけど。

あとは、2017年の『Flower Boy』がリリースされた週。仕事が何もない日があったから、俺とジャスパー、ワイアットでニューヨークに浮かぶ島をあちこちスケートしてたんだ。特に目的地もなくね。そしたら俺たちマジで迷子になっちまって。それがただただ楽しかったんだ。目的地も、やることもなく、買うものもなく、ただ天気の中走ってた。ニューヨークはビルだらけだろ。LAは高い建物がないから、太陽がいたるところに降り注いでる。ニューヨークはビルの間から太陽の光が差し込んでさ。アルバムを出したばかりで、上手くいってたし、理由も目的もなしにスケートして、汗かいて、超最高な日だったね。

Z : 上手く構成を作り上げたり、サンプルに対して新しいアイデアでアプローチできる人で好きなアーティストはいる?

T :  あぁ、ドレイクは曲の構成がマジで上手い。

Z : フランク(フランク・オーシャン)も構成が上手いよね。

T : あぁ勿論フランクも上手い。ネプチューンズも上手いよ、遊び心を忘れてないし。でも” Started From the Bottom “のサンプル (クラシックミュージシャン” Bruno Sanfilipino のAmbessence Piano “をサンプリング) はマジで上手いと思う。昔から好きだった音楽をそういう視点からも見るようになったね。

Z : カニエのイケてるヴァースを聞いたけど。

T :  ああ。” Puppet “にね。カニエは大好きだよ。『ye』はカニエの中でも3本の指に入るアルバムだと思う。” Violent Crimes “を聞いた時は涙が出たね。彼のアルバムに対する正直な姿勢はクレイジーなほどだね。

Z :  彼はずっと正直だけどね。

T :  でも違うんだ。マジでさ。『ye』はちょっと違ったね。ベストフレンドが敵に変わっていく様を描いてるんだけど、マジであのアルバムが好きなんだ。イントロのドラムが入る瞬間でもう、あのアルバムは最高だね。

Z : リスペクトを込めて質問するよ。君は今ナンバーワンアルバムをリリースしたところで、素晴らしい波に乗っていると思うけど…

T :  ビリー・アイリッシュがアルバムをリリースするまではな。彼女がどっかから急に出てきたんだ。

Z : 確かに彼女はそのスポットに値するよね。あのアルバムにはびっくりしたよ。あのアルバムは気に入った?

T : ああ、イケてると思う。彼女のことが好きだよ。彼女とコラボしてみたいよ。

Z : 君は過去を振り返らないのはわかってるけど、ここ10年で、君たちのクルーが、若者のインディペンデントなクリエイティブ・スピリッツに最も大きな影響を与えたと思うんだ。Odd Futureのことだよ。間違い無いと思う。君たちが出てきた時、君たちは一人一人が独立していて、何事にもオープンだったよね。何も恐れていなかったしさ。結果的に今、それぞれは成功しているし。そこで疑問なんだけど、その経験や、過去を振り返ったり、何かに書き下ろしたりしようとは思う?

T : 俺はまだ、この時代にどんなインパクトを残せたかのかすら実感できてないんだ。確かに楽しかったし、イケてたとは思うけど、Odd Futureがどれほど大事な存在だったかはわかってないんだ。俺にとって、あのクルーはただ生活の一部だったし。

Z : 君たちが思ったこと、不安や憂鬱、性的趣向や、自分がどんな人間かを主張することで、それが色々な人にとっての道筋、明かりになっていると思うんだ。

T : 多くの人に、自分が何者であるかに正直になって欲しいんだ。そのためのドアになっていたいね。他のモノや人に合わせなくてもいいんだって伝えたい。

T : 俺はただ自分の持つアイデアを実現したいんだ。それがもしナンバーワンになったり人気が出れば、「マジかよ」って感じで喜ぶけど。みんなが好きそうかが基準なんかじゃない。だってみんな『Cherry Bomb』がクソ嫌いだろ。

Z : そんなことないよ!

T :  いや、マジさ。ほんの少しの人しか好きなんて言ってくれないよ。インストが出た段階じゃ感謝されてたのに、リリースされた瞬間、ひどい言われようだよ。マジでみんな『Cherry Bomb』がクソ嫌いなんだ。マジでファッキン嫌いなんだ。みんな理解してくれなかったんだ。曲が悪いんじゃなくてお前らの音楽のセンスが「表面的」なんだよ。音楽を理解するために使う知識がなくて、「黒人の変なヤツ」なんて言葉でしか表現できないんだ。あのアルバムが「良かった」「悪かった」の話をしてるんじゃないぜ。ただみんながあのアルバムをクソ嫌ってたってハナシさ。

でも『IGOR』のジャケットで、俺がスーツにウィッグをつけて、あのビートで、この音楽界で一番になったんだ。全員を打ち負かしたんだぜ。全員だ。もちろんキャレドをディスリスペクトしてるわけじゃない。けどカーディ・B、21Savage、ポスト・マローン、トラヴィス・スコット、ビヨンセ、全員だぜ。このアルバムでだ。この音楽界で、同じ世界の平行線でそれを成し遂げたんだ。マジでファッキン・クレイジーだよ。「本気かよ?」って感じさ。マジで狂ってるよな。努力して、努力して、努力した結果だよ。細かい部分を突き詰め続けた結果さ。マジで自分が誇らしいね。

ファレルとフェイス・タイムで話した。俺はハッピーだってね。そういう俺のことを誇りに思ってくれる人に愛を伝えたんだ。ナンバーワンになったことは確かにイケてると思う。でもまた仕事に戻るんだ。映画を作らないと。あのナンバーワン、1位を取った事実ばかりにこだわり続けるのは、ただのベイビーシッティングだよ。マジで感謝してるし、超ハッピーさ。でも、過去にはすがらねえ。俺にはまだフェスティバル (Camp Flog Gnaw) もあるし 。今になっては全米で3本の指に入るフェスさ。

Z : そうだね。ちなみに何の映画だい?

T :  あぁ、いつか作る映画の話さ!

Z : もう脚本はできてるの?

T :  さぁ。どうかな。

Z : 最後に聞かせて欲しい。君は今世界の95%の場所に、どこにでもいけると思う。

T :  イギリスにもね。
(タイラーはイギリスに入国禁止でしたが、最近入国が許可されました)

Z : そのイギリスで3つのショーが控えてると思うけど、どんなライブになると思う?

T : マジでクソ変な気持ちだよ。マジで楽しみだし、イギリスに帰れるのは超ハッピーさ。
きっといいショーになるはずだぜ。きっと上手くいくね。

Credit

Text : Shinya Yamazaki(@snlut

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