idk is he real

GENIUS

IDK(アイ・ディー・ケー)

デビューアルバム『Is He Real?』に込めた想い、G.O.O.D Musicからのオファーを断った理由を語る

OCTOBER 24 , 2019

ロンドン生まれ、メリーランド州出身のラッパーIDK(アイ・ディー・ケー)をご存知だろうか。現在27歳、4枚のミックステープを2014年から製作、今年9月にはメジャーデビューアルバム『Is He Real?』をリリースするなど多くのファンを抱える人気ラッパーだ。
その作品への高評価、厚いファンベースを持つことから今年6月にメジャーレコード会社ワーナーミュージックと契約を果たす彼だが、やはり彼へのオファーは「引く手数多」だったようだ。

今回彼はGenius の「For The Record」のコーナーに出演し「なぜワーナーミュージックを選んだか」、「デビューアルバム『Is He Real?』について」など50分に渡り、その考え・想いを明かしてくれたので紹介していきたいと思う。

「実際はG.O.O.D Musicからオファーをもらっていた、それにTDEのボスとも話したんだ。多くの子会社ともね。
でも気づいたんだ。俺はどんなところでも自分の作品が作り出せるって。
ただ作品に対してコントロールを持てるだけでなく、色々なアーティストをゲストとして招く事ができるだろ。しかも、そのアーティストたちのキャリアを助ける事ができる。広い視野を持った結果だよ。」

カニエ・ウエストやプシャ・Tが率いるG.O.O.D Musicや、ケンドリック・ラマー擁するTDE(Top Dawg Entertainment)から契約のオファーを断ったのは、人気あるラッパーたちと共演しなくても自分の作品を作る事ができると気づいた事、制限なしに多くのアーティストをゲストに招く事ができる事が決め手だと語ったIDK。
より「チーム」のような結束感のある二つのレーベルよりも「個人」として作品を作っていくことや、新しい才能あるアーティストを発掘する事ができることに魅力を感じたのだろうか。
しかし一般的にはメジャーレーベルには多くの制約があると言われるのが通説だ。インタビュアーRob Markman(ロブ・マークマン)はこう質問を返す。

「カニエを例にとれば、彼は本当にクリエティブだよね。まさにアーティストという感じで、アートの境界を取り払ってチャレンジし続けている。
ケンドリックやシザにも同じ事が言えると思う。しかも彼らは実際に成功しているし。それぞれが唯一のクリエイティブを発揮しているよね。
そんなオリジナリティ溢れる彼らが所属するレーベルからの誘いを断るのは難しい決断だったんじゃないか?」

対してIDKは、

「正直に言うと、どのレーベルにも俺が必要としていたものはあったんだ。次のプロジェクトに移るために必要なものがね。
決断をするのが難しかったかって?全然そんなことはなかった。
一番の決め手は「成り行き / 状況」さ。全ての出来事は起こるべくして起きてる。今日俺がどこにいるか、昨日俺が何を食べたか。全て運命づけられてるんだ。」

「メジャーレーベルか、G.O.O.D Music・TDEか。」普通であればどちらの選択にもメリットがある、かなり難しい決断だと思うが、彼は神の導き、あるいは直感をまず大事にしているようだ。
「神、そして神の力を信じるか?」と言う質問に対し、はっきり「イエス」と答える彼のデビューアルバム『Is He Real?』は、まさに神(He)の存在を問う、そんなテーマを扱った作品だ。

彼はインタビューにてこのコンセプト・アルバムを

「クロスワードよりも、ダヴィンチコード的な(作り込まれた)作品だ。」

と表現する。

「俺の発する言葉、一つ一つを繋ぎ合わせる作業も、楽器の使い方も、サンプルの使い方とってもそうさ。全てに理由がある
もちろん全てを知るまでは理解できないだろう。それは俺が実際に自分の口から話さないとわからないことだしね。
でも俺は、全ての曲、アルバムのディテール全てを理解して初めて一番作品に没頭できると思うんだ。」

オープニングトラック” Cloud Blu “で「神様なんていない」と断言する子どもの声から始まるアルバムは、「神を信じることと、金を追い求めることの矛盾」を語るマタイ福音書6章24節を引用した” 24 “を経て、母ジュリアの死を語りながら「神はどこにいるんだ?」と問い続ける” Julia… “でラストを迎える。

実は最後までアルバムのテーマである「神は本当に存在するのか?」という問いの答えは曲中では明かされていない。その理由は、一人一人にこのアルバムを通じて神の存在が本当なのか「自分で考えてみてほしい」という彼の想いからだったようだ。

「アルバムの全てを計算しつくしている。アートワークもトラックもそうさ。曲名の最後のスペルを並べると「YOU SEE 4 YOURSELF – 自分自身で確かめろ」になるようにね。「IS HE REAL? – 神は本当に存在するのか?」という問いの答えはそこに隠されているんだ。
俺の考えだけじゃなく、みんながどう思うか。俺の考えだけで完結されるのではなく、これを聴いた人がどう思うか。このアルバムを通じて提示したかったのはそこだ。」

アルバムには彼が経験してきた様々な出来事が記されている。
中には少年時代を振り返るもの、母の死という悲劇を描くもの、金と性という「悪魔」を描くものなど様々なものがある。その多くが「神」や「信仰」といったテーマと繋がっている(間接的なものも多いが)
36分という短い時間で、しかも彼が言うような間接的な表現を行いながら「神が本当に存在するか」という非常に大きなテーマを扱うのは難しい。
しかし、その方式を選んだのは彼自身が議論を完結させるのではなく、オープンな形でこの問いを提示することを自ら望んだからであるということがこのインタビューからはわかる。

DMX、タイラー・ザ・クリエイター、プシャ・T、JIDなど豪華なゲストを迎えたアルバム『Is He Real?』は9月にリリースされたばかりだ。彼がこのアルバムに込めた想いを知った上で是非チェックしてみて欲しい。

 

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