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The New York Post

「俺たちの生活はまだストリートにある」
ジェイ・Z、NFLとの提携から受けた批判への想いを語る

FEBRUARY 03 2020

本日、2月3日(米: 2月2日)、アメリカのNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の王者決定戦であるSuper Bowl(スーパーボウル)がフロリダ州マイアミにて開催された。音楽ファンは試合だけでなくハーフタイムショーからも目が離せないわけだが、近年、パフォーマンスを行うアーティスト、NFLとアーティストの関係性を巡って、大きな論争が起きている。

事の発端は2016年。当時サンフランシスコ・49ersに所属していたColin Kaepernick(コリン・キャパニック)選手が、アフリカン・アメリカンへの警察の暴力、差別的な事件に抗議し、国歌斉唱中に膝を突き、起立を拒否し、その罰則としてNFLから追放処分を受けた。ドナルド・トランプ大統領は彼を「不敬な態度を取るクソ野郎、解雇しろ」と発言し、多くのアメリカ国民がNFLと大統領へ抗議の声を挙げた。

それ以来、軋轢を抱えた抗議者たちはNFLが主催するSuper Bowlのパフォーマンス・アーティストにアフリカン・アメリカンが登場することを問題と見なし、実際にリアーナ、カーディ・Bはパフォーマンスを拒否してきた。

ジェイ・Zはアーティストとしてハーフタイムショーに出演したわけではないが、今年4月、自身が率いるRoc Nation(ロック・ネーション)NFLとパートナーシップを結んだ。ラッパー、企業家として一つのフッドのロールモデルとなったアフリカン・アメリカンの大スターが結んだ提携に、当然、抗議者からは疑問の声が挙がったというわけだ。

(Did Jay-Z Sell Out? / (c)2019 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION)

Roc Nation、NFLのパートナーシップの内容は

・ライブ・パフォーマンスの演出向上
・インスパイア・チェンジへの協力(コミュニティの機会平等・社会正義の育成・強化)

が主なものだ。エンターテイメント・カンパニーとして、NFLに特に音楽ライブ(ハーフタイムショーなど)の企画(今年のハーフタイムショーはRoc Nationが手がけている)、音楽とフットボールが手を結び、問題に対してより大きなインパクトを生み出すことが目的のパートナーシップだ。

前置きが長くなってしまったが、このパートナーシップへの批判を受け、ジェイ・ZがThe New York Timesにてコメントを発表。その考えを明かしてくれたので紹介していこうと思う。

実際に人が傷つけられ、尊重されず、家族が失われるようなことがあれば、一連のネガティブな訴えに出る。
貧しい環境、恵まれない環境で育ったクライアント、刑事司法の変革、暴力への即座の対応へ高まる注目への、Roc Nationのレコード・レーベル、マネージメント・カンパニーとしての役割が、NFLとの契約に繋がったんだ。

フットボールはアメリカにおける、いわゆる「国民的なスポーツ」であり、その大会王者を決めるスーパーボウルはまさに一大行事である。Roc Nationは会社としての役割を果たすべく、その注目を用いたと語る。

カーディ・Bの「彼はきっと合意なしに契約なんて結ばない。「俺に協力してほしいなら、有色人種をここに入れる必要があるだろ。俺のやり方でやるしかない」って言ったと思うわ。彼ならNFLを変えられると思う。」というコメントからもわかるように、音楽業から厚い信頼を持つジェイ・Zは、あくまでこのパートナーシップの主導権を握っているという声もあった。やはり彼は今、問題を一歩先に進めるべきという考えを優先しているようだ。

誰も「彼(キャパニック)が正当な扱いを受けた」とは言っていない。彼は間違った扱いを受けてきた。もしこの議論が3ヶ月前なら話はわかる。
でもあの問題は3年前に起きたんだ。誰かが「今、何をすべきなんだ、人が死んでいるんだ」と言うべきか?
俺たちは「NFLで大金を稼ぐ」なんて言っていないだろ。

俺たちが育ってきた環境を鑑みれば、社会的な正義にフォーカスするのは当然だよ。俺たちが契約を結んでいる75%の人が貧困地域で生まれてる。
会社と契約を結んだからって、フッドやストリートとのコネクションが終わるわけではない。俺たちの生活はまだそこにあるんだ。いとこは弁護士を必要としているし、母親はまだ家賃が払えない。それが現実だよ。

以上のコメントは理由を含め、なぜ彼、そして会社がNFLとの契約のテーブルに座ったかがよくわかるだろう。

過去に彼が「社会的不平等に関心を向けることを目的に、コリンが行動したことを私たちは忘れがちだ。そういう意味でこれは成功だ。抗議行動には2つの要素がある。外に出て抗議すること、そして会社に「言いたいことはわかった。これからどうすればいい?」と言わせることだ」と語るように、キャパニックとジェイ・Zは方法は違えど、同じ方向を向いて、社会の改善を目指しているはずだ。

また、ジェイ・Zはこのインタビューで、社会的正義を築き上げるためには、どんな人にでも、同じように即座に弁護される権利を与えるべきだと語っている。

(2018年8月NY・ブルックリンで起きたアジア系従業員と、黒人女性客の乱闘事件を受けて)ニュースでブルックリン、俺の出身の話がされていた。それが自分の中で、問題に取り組む引き金になった。
俺たちには(問題が起きた後に)リアル・タイムで起きた出来事について話すこと、証明することができる機会が必要なんだ。
「金を与えて、弁護士を呼ぶ、弁護をする」を即座に起こさなければいけない。

もしミシシッピで問題が起きれば、メンフィス出身のYo Gottiが仲介に入るし、フィリーで問題が起きれば、Meekが仲介するんだ。

貧困層であろうと、何か事件が起きた時、即座に弁護されるべきである。というのはミーク・ミルの青年時代の逮捕を例に挙げれば、非常に重要な提言だ。彼は金銭的な理由から弁護士を即座につけることができず、後に明らかに不当な判決を受けている。

Yo Gotti、Meek Millのような所属アーティストと共に、Roc Nationがチーム、会社として結束、協力し、社会的正義の成立という同じ目標に向かっていることがよくわかる発言であり、過去に正しいとは言えない罰則をキャパニックへ下したNFLの内側から、その影響力を用いて、現状を変化させようという決意を元に契約を果たしたことは間違いないだろう。

ジェニファー・ロペス、シャキーラという2人のアーティストが出演した、今年のハーフタイム・ショーをプロデュースし、絶賛を受けているということからも、彼らにとって良いスタートは切れたように思えるが、今後どのような取り組みを行っていくのだろうか。注目していきたい。

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