ナイジェリア生まれ、シカゴ育ち、現在32歳のラッパーTobi Lou（トビ・ルー）をご存知だろうか。
彼は2016年にリリースしたシングル” Game Ova “、Sminoとのコラボ・シングルのヒットを機に、SoundCloud、Youtubeで着実にその名前を知らしめてきた。

2018年にデビュー・アルバム『Tobi Lou and the Juice』、2019年8月にセカンド・アルバム『Live on Ice』をリリースしたばかりの彼。SoundCloudラップに大いに影響を受けたローファイ・テイストに、ソウルフルな要素を感じる独自のサウンドに魅了される人は多い。

そんなシカゴ出身の彼がラップを始めたきっかけ、独自のクリエイティビティを発揮できるマインドセットをGeniusによるインタビューにて語ってくれたので紹介したいと思う。

“ 俺はいつも自分が「変」だと思ってた。俺はウィアード（周りに馴染めない存在）だった。

自分がミュージシャンになると決めた瞬間は多分、初めてカニエ・ウエストを聴いた、あの瞬間だった思う。
自分と同じシカゴ出身で、しかもウィアードな男である彼がNYで偉業を成し遂げていたんだ。その事実が俺の世界を広げてくれた。それを見て以来、「やるぞ」って気持ちになった。さあやってやるってね。”

「男らしさ」を声高々に語るラップが商業的にも成功していた2000年代前半に、芸大中退というバックグラウンドを持ち、社会問題、憂鬱、失恋をテーマにしたラップを披露し、爆発的な人気を得た同郷出身のアーティスト、カニエ・ウエストの姿が彼に勇気を与えたのだと語る。

先日行われたグラミー賞授賞式でタイラー・ザ・クリエイターがファレル・ウィリアムスに向け、同様のコメントを残したように、勇気を持って本当に自分が表現したいものを貫く姿勢は、多くの若者たちに希望を与える。
また「同郷出身」という要素も若者にとって非常に重要だろう。自分が見慣れた環境で生まれ育った先輩アーティストが成功するのは、他の要素とは比べ難い大きな希望を若者たちに与える。

アーティストが、周りと自身を比べ、「変」であると認識した若者に対して、ありのままでいることを肯定してくれる存在でいることは本当に重要なことであると、トビやタイラーのようなアーティストの発言を見ると感じるばかりだ。

“ 新たな領域に踏み入れ続けて、ルールを壊し、クリエイティブでいることを大事にしてきた。みんなが何を行なっているかを見て、同じことはしないようにしたんだ。俺は自分のやり方が好きだから。”

彼のヒットの震源地はSoundCloudや、Youtubeだけではない。
2018年にリリースしたEP『tobi lou and the Loop』から” Buff Baby “がヒットした経緯を彼は以下のように語っている。

“ （” Buff Baby “について）俺たちアーティストには興味深い曲になったよ。最初にツイッターで人気が出て、少し時間が経って、2018年にはさらに大きな渦になった。そして2019年にTikTokだよ。
そこで再び人気が再燃したんだ。何が起きるかわからないというのを実感したね。
今のそういった状況は俺に色々なことを可能にした。将来作る予定の作品、今制作している作品に向けてクリエイティブでいれるんだよ。多くの人々によって突然人気が出ることがあるしさ。本当に感謝してるよ。”

Roddy Ricchの” The Box “がアルバムのリリースから5週を経て、TikTokでの「バズ」により全米第一位を獲得したことも記憶に新しいが、この新たなトレンドに対し、アーティストとしての目線から彼は新たな可能性を感じると語ってくれた。
勿論Lil Uzi Vertの” Futsal Shuffle 2020 “のようなリスナーによる2次的なコンテンツを予め狙った作品もラップ・シーンには登場し始めているが、Roddy Ricch ” The Box “のように当の本人にして見れば、全く予想していなかった状況が巻き起こる状況が起こっている。

「どんな作品が、どんなきっかけでヒットを生み出すかはわからない」
だからこそ、アーティストたちは「ヒット路線」の思考に囚われることなく自由な制作ができるということだろう。

“ 恐れることなく、自信を持ってやりたいことを実行することで、自分の限界を押し上げられると思うんだ。”

私もトビのようなアーティストが既存の「限界」を押し上げ、次の世代の希望になり、一人でも多くの若者が「ありのまま」に自分を表現できることを願っている。彼の最新アルバム『Live on Ice』は昨年8月にリリースされたばかり。是非チェックしてみてほしい。