Chika

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「私は正直であり続ける」
常識にとらわれないラッパーCHIKAが持つパッション

APRIL 05 2020

1997年生まれ、アメリカ南部・アラバマ州育ちのラッパーCHIKA(チカ)は同世代で最も注目されているラッパーの一人だ。

トランプ支持を強調するKanye West を皮肉るフリースタイルがソーシャル・メディアでバイラル・ヒットしたことにより一躍注目を浴びた若者は、その動画を皮切りに、人気番組「Jimmy Kimmel Live」にてパフォーマンスするチャンスを掴み取るなど、アーティストとしての作品の魅力を証明してきた。そして先日、3月12日にはWarner Records からデビューEP『Indusry Games』をリリースしたばかりだ。

勿論彼女のラップ・スキルや、作品のサウンドは大いに魅力的だが、多くのメディアが彼女を紹介する際に特筆するのは、そのジェンダー・アイデンティティ(彼女は自身をバイセクシャル / パンセクシャルと表明している)、政治的なテーマを含んだ、音楽を通じて発する詩的なメッセージ、そして、それらを発信することを恐れないメンタリティそのものだろう。

印象的なのは「Jimmy Kimmel Live」で披露した “ Richey v. Alabama ” という作品だ。「非常に保守的」だと特徴付けられる彼女の出身地、南部・アラバマの現実を音楽に昇華させ代弁したステージが大いに話題を呼んだ。

1997年生まれ現在23歳の彼女は注目を浴び始めた今、何を思うのだろうか。DJ Boothによる電話インタビューで、ヒットのきっかけとなったフリースタイルに、ラッパーの道を志した理由、デビューEP、自身のアイデンティティについて語ってくれたので、紹介していこうと思う。

(Kanye West についてスピットしたフリースタイルについて)

時々ネガティブに受け取られることもあるけど。それでも、あのフリースタイルが私に与えてくれたチャンスは、今までに経験したネガティブな側面を考えても、はるかに大きなものだね。

Kanye West の “ Jesus Walk ” に乗せたフリースタイルでその名をコアなヘッズに知らしめたCHIKA。その「きっかけ」からラッパーの道を進むまでには少々距離があるだろう。「Kanye West への手紙」以降、彼女には以下のような変化が訪れたそうだ。

ソーシャルメディアやプラットフォームで存在感を手に入れ出して、自分の行動が及ぼす影響が見え始めた。色々な人がすごい勢いで私や、幼い頃からの夢であるミュージシャンへの道をサポートしてくれて。フリースタイルの投稿はずっと続けて来たこと。だからこれからも続けようと思ったの。ギターを弾いたり、歌を歌ったり、カヴァーする動画をポストしたりね。

自分の詩やラップの反響を見たとき、「きっと自分にも何かが出来る!」と思ったわけ。望めば自分が出来るとわかってた。ラップを書いて、自分のものに出来るとね。最初はただギターを演奏していただけだったけど、音楽のインパクトを目にしたとき、「これに時間を注いで完璧にする」と確信した。

今やインスタグラムで100万人以上のフォロワーを抱え、XXLによる「Freshman 2020」の候補にも選抜されるほどのラッパーとなったCHIKAだが、以上のようなプロセスを経て今があるようだ。

彼女のデビューEP『Industry Games』で何より目立ったのは、そのラップ・スキルだ。(勿論その詩的なリリックは非常にクリエイティブだが)「女性ラッパーはラップできない」とは言わせない質の高いプロジェクトはフリースタイルやカヴァー作品の制作とは、制作のプロセスが異なってくるはずだが、彼女はどのように作品に熱を注いできたのだろうか?

“ 私が作品に力を注ぐ姿は、親が子を持った時にとても似てる。勿論、親はみんな子どものことは愛しているし、私も生まれた頃からずっと音楽を愛してる。歌詞を書いたり、音楽に関連することをすることがね。だけど、ある意味では、子どもは作品であり、資産であり、投資でしょ。音楽も同じことだと思うの。自分のスキルを完璧にして、それを育み、発信し続けるという点ではね。

音楽への愛に溢れる彼女の作品の特徴の一つは、彼女自身の持つ考えや思いが正直に反映されてることだろう。CHIKA は自身のジェンダー・アイデンティティを公表しているアーティストの一人であり、その点でも注目を集めることがあるが、彼女は自身のアイデンティティを公表することにためらいはなかったのだろうか?また、公表したことによる影響はあったのだろうか?

私にとっては公開しないほうがより難しい。正確に言えばバイセクシャル、そしてパンセクシャルという言葉が自分に一番しっくり来るんだけど。別に男の人について曲を書くのも特別、変な心地はしないわ。主にデートするのは女性だけど。だから別に女の人について曲を書くのも変じゃないし。

私たちは何でもかんでも物事を政治的にしたり、自分の持つアイデンティティを強く意識しすぎるの。ただ単純に感じたことを書くのではなくね。

女の人について話す時も別に口調を変えたりしないし、私は特定の人に語りかけているだけだから、その人の性別は関係ないの。私の作品が正直なように、私も正直であり続ける

(アイデンティティを理由に、行きすぎた推測をする人々の存在について)

基本的に人がアーティストをクィアであるかどうかを区別する基準は、「自分が自分であることに違和感を持ったり、自分を形容する表現に違和感を感じないか」という点だと思う。だけど、私はそんなこと考えたことがない!

あらゆることについて考えを巡らされたり、質問されたり、解釈されたりしてきた。でも私は何者なの?って話。私も他の人と同じように世界を生きてるだけ。時には良い時も悪い時もあるけど。それはみんなと同じ。

クィアの人間だって、普通の人間。私は普通とは違う経験をしてきた、だから、その経験について尋ねることは大事なことだと思う。なぜなら違う観点を知ることができるから。けど、実際はこう。「彼女、不快に思うに違いないわ!」って。なんで?普通の人間が、普通に音楽を作っているだけなのに、なんで不快になるの? ”

彼女は自分に対して正直に、あるがままでいる状態こそが最も心地が良いと語る。不安や疎外感、周囲の理解のなさから、正直にアイデンティティを明かさないことを選ぶ人も当然いるかとは思うが、彼女が「自分が自分らしくあること」に心地が良いと感じ始めたのには、何かきっかけがあったのだろうか。

誰もが自分らしくあるべきだと気付いた時だね。自分がクィアであることや、サウスで育ったことをヴァースにし始めた時を思い出すわ。そもそも私は神様が(ジェンダーにおけるマイノリティを産み出すことで)失敗を犯したわけじゃないと考えているし。

世界を生きていく上で、この脳に元来プログラムされているような考え方を捨てることを始めたの。「Yo! 自分に欠陥があるかどうかなんて、疑問を抱きながら生きなきゃいけない人なんて誰もいない。だから私もやめよう!」ってね。私は自分であり続ける。自分自身のことは自分で決めるわ。地球にいる限り、私は快適だから。

「誰もが自分らしくあるべき」「だから私も自分であり続ける」、そう語る彼女の放つ言葉は恐れを知らない。ラップにおけるスキルを完璧に育て上げ、堂々と舞台に立つ彼女の姿が「自分は他人とは違うのではないか」「自分が少数派だ」という理由で不安を抱える多くの人に勇気を与えることだろう。
彼女のデビューEP『Industry Games』はリリースされたばかり。未聴の方には是非チェックしてみてほしい。

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