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NYC Newswire

「全てを手にするとはどういう意味か」
KOTA the Friend、2ndアルバム『Everything』のコンセプトを語る

May 05, 2020

NY・ブルックリン出身のラッパーKOTA the Friend(コータ・ザ・フレンド)はヒップホップ・シーンの中で特異な立ち位置を取っている。流行りのサウンドでもなければ、古典的でもない。話題をさらうような言動をするわけでもなく、極端に目立つような容姿をしているわけでもない。しかし、そんなインディペンデントなアーティストは今、確かなファン・ベースを獲得している。(彼のことをあまり知らない、その作品をまだあまり聴いたことがない人は、是非以下の紹介記事をまずチェックしてみてほしい。)

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昨年デビュー・アルバム『Foto』をリリース。今年に入ってからもミックステープ『Lyrics To Go』をリリースするなど、精力的に制作を行っている26歳のラッパーは今週末に2nd アルバム『Everything』をリリースしようとしている。温もりを感じる、身近な世界観を描き私たちを惹きつけてやまない彼の最新アルバム、そしてインディペンデントなアーティストとして、ユニークな立ち位置で活躍することについてUPROXXのインタビューで明かしてくれたので、紹介していこうと思う。

自宅待機期間は忙しく過ごしてた?最近は何をしていたの?

アルバムで忙しくて手をつけることができていなかった作品を完成させてきて、今は息子のために時間を作ろうと試みてるね。俺はシンプルなことが好きなんだ。アルバムが完成したからこの期間は、健康保険の手続きをしたり、生活を整理したりして、良い流れでアルバムをリリースできるよう準備してる。

 

そうだね。やるべきことが沢山あるから大人は大変だ。けど、それが落ち着いたら、細かいことも手をつけられるもんね。じゃあ新しいプロジェクト『Everything』について教えてくれるかい。いつから制作を始めたの?前作『Foto』との違いは?

今年はアルバムを作る気は全くなかったんだ。けど、どこからか良い曲が浮かんできて。俺の場合はいつもそうなんだけど、曲を作る行為こそが自分を前に進めてくれるし、プロジェクトを作ろうというモチベーションにもなるんだ。今作と『Foto』の違いは、よりアップテンポな作品が増えたね。より踊れるような曲が増えたと思うよ。

今回の作品で俺がフォーカスしたかったのは、とにかく最高に「Feel Good」な作品を作ること。一曲たりともダウナーな気分になるものは作りたくなかった。全てが気分の上がる曲で、みんなを盛り上げて、良い気分にしたり、最高に心地の良いノスタルジックな空気を生み出したいんだ。だから間違いなく『Foto』よりもポジティブで、ライトなもの。だけど意味のある内容で、俺らしい作品になってるよ。

 

タイトルは『Everything』だけど、作品にそのタイトルをつけるのは、かなりヘヴィーな印象を受けるよ。タイトルは何にインスパイアされて、どんな意味があるの?そしてリスナーにとってどんな意味のあるものなのかな。

大学にいた時、俺は小さなヒップホップ・トリオをやっていて、ファースト・アルバムを『Anything』と名付けたんだ。だからセカンド・アルバムを『Everything』と名付けたかな。それはただ単にフレーズを引用しただけじゃなくて、アルバムの名前として素晴らしいと思ったから。けど『Everythng』は「君にとってEverything – 全てとは何?」ということを問っているんだ。「全てを手にするとはどういう意味か」という問いだよ。
だからこそ、自分に立ち返って、本当にポジティブなアルバムを作ろうと思った。俺は個人として望むことを顕在化させるような、とにかくポジティブな作品が作りたかった。

アーティストとして、自分の真実を本当に語っていれば、その言葉はパワフルなものになる。そして音楽の中で綴った言葉は自分に多くをもたらしてくれるんだ。言葉が現実になったり、生活になったりね。

だからこのアルバムは自分の求めていること、自分にとって意味のあるもの、自分にとって重要なもの、他の何よりも優先する物事について多く語ってる。アルバムにはファンや、アクター、アーティスト、色々な人物が参加している。それぞれがインタールードで、自分自身にとって「Everything」とはどういう意味かを語ってる。

 

それはイケてるね。考えさせられるよ。ヒップホップ・シーンの中で、あなたはどのように自分のポジションを明らかにしてきたの?あなたはすごく興味深い立ち位置だから。メジャー・レーベルのアーティストではないけど、同時にあなたはファンのベース、ムーブメントを生み出して、みんなは君の動向をチェックしてる。どうやってその立ち位置を実現させたの?そしてそのポジションはあなたにとってどんな意味がある?

すごく重要なことだ。というのも、俺が多くの人へ表現していることの一つに「自由」というものがあるから。やりたいことをして、言いたいことを言って、自分を幸福にしてくれることをする。
俺が実現できたのは、ただ努力し続け、物事に向き合い続け、地道に頑張ってきただけさ。これは俺にとって重要なことなんだ。俺は自分の今いる場所と、世界中でツアーをする自分を対比するリリックをよく書いていたくらいだから。


(YouTube)

話をアルバムのコンセプトに戻すよ。「君にとって全てとは何か」ということだったね。実現するのがすごく難しいコンセプトだと思う。正直で、弱さを見せないといけないから。そういった複雑なアイデアを表現するに際してのチャレンジ、そしてその収穫はあったのかな?

俺がその質問をするとみんな回答に困るんだ。あなたが言ったように、ヘヴィーな質問だから。けど思ったんだ、それぞれ答えを見つけると、みんなの回答が本当に似ていることに。実際にその質問について深く考えを巡らせると、みんな同じような回答を思い浮かべるんだよ。「家族か、友達か、旅行かな」とか、「他のカルチャーを知ること、他人を理解すること」とかね。
特に今の時代は、お金持ちでも、貧乏でも、中流階級でも、どんな人でも同じような価値観を共有していると俺は思うんだ。少し考えてみれば、それほど難しいことではないのかも。けど確かに、いきなり聞かれると回答に困るよね。

 

この作品には興味深いゲストたちが参加しているね。Bas にTobi Lou、Joey Bada$$、みんな私が個人的に好きなアーティストなんだけど、インディペンデントに活動しながら、こういったアーティストたちとどのように繋がりを持ったの? A&R が手を差し伸べてくれるわけじゃないし。必死に頑張った成果なのか、それとも、自然なプロセスだったのかな。

すごくナチュラルなプロセスだったよ。けど、アルバムに参加してほしかっったけど、望みが叶わなかったアーティストもいた。プロジェクトを制作している時、俺は自分が好きなアーティストを呼びたいと思っているんだ。ビッグ・ネームであるかどうかは関係なくね。
前作ではSaba が唯一のゲストだったけど、それには理由があるんだ。それは彼が今のラップ・シーンの中で最も才能に溢れたライターだから。だから彼を欲したんだ、彼のペンを使ったゲームが何より力強かったから。
だけど今作では、全員が俺の昔からの知り合いだ。一度は会った事のある人たち。Bas にはベガスであったし、Joey はブルックリン出身。よく電車で遭遇したりもしたね。そして俺はTobi Lou の大ファンなんだ。彼のことをよく話していたから、インターネットを通じて会えて、仲良くなった。もし誰かが作品に参加できなくても、別に問題はないさ。オール・ラブだよ。

 

今年の初めにあなたは『Lyrics To Go』という作品をリリースしたよね。私の好きなTribe Called Quest の曲名というだけではなく、素晴らしいコンセプトを感じたよ。なぜあの作品を録ろうと思ったの?そしてアルバムの間と間に、あの作品をリリースする事の重要性を感じた理由を教えて。

思ったんだ「アルバムを出す前に、何かをリリースしたい」とね。というのも、俺は本当に山ほどリリースしたい曲を抱えていたから。今年やりたいことは実際それだけだった。YouTube にファンのためにビデオ・シリーズを投稿したり、インスタグラムに投稿したり。ファンがいない頃にやっていたことを繰り返した。

俺はただずっと、どんなビートでもラップをしたのさ。人気のビートにも、YouTube のビートにもね。1分間のヴァースを録ったら、それに勢いがで初めて。俺はそうやってファンを獲得してきた。昔からのファンは昔やっていた『Lyrics To Go』というビデオ・シリーズで俺のことを知ってくれた人も多いと思う。ずっと『Lyrics To Go』だけのアルバムやプロジェクトを出すべきだと言われてきたから、プロジェクトの合間はまさに素晴らしいタイミングだと思ってね。

 

自分が有名になったと思った瞬間はあった?「おい、俺有名人じゃん!」みたいに。それとも有名だとは思っていない?有名の基準ってどこにあると思う?

「Drake は有名だ」くらいのレベルかな。彼が新曲の中で言ってたんだ「これは名声だ。クラウトじゃない」って。それを見て「なるほど。名声とクラウトと違うんだ」と腑に落ちたよ。だから俺は人気があると言っても良いし、みんなが俺のこと、俺の曲を知っていると言っても良い。実際に「おいおい、みんな俺のことを知ってるじゃないか」って思う瞬間もあったけどね。

仮に俺が写真を投稿して、4万人が「いいね」をしたとしよう。よくよく考えれば、4万人が実際に行動を起こしているんだよ。本当に沢山の人だし、俺は今よりももっと有名になりたいとは思っていない。この瞬間で俺はただ音楽を作りたいだけで、その後は裏方にフェードアウトして、他の人を手伝いたいんだ。自分以上の場所までその人を連れて行けるように。

 

今回の作品をリリースした後に訪れる、あなたの理想の結果というのは何?

アルバムをリリースした時、俺は過度な期待を持たないようにしてる。だから今はただみんなに聴いて欲しい。みんながどんな風に受け取るのかはわからないから。だから俺はこんな風になるのが嫌いなんだ「Yo、これはホームラン級だぜ」とか言って、誰も聴いてないみたいな。

だからこう言っておくよ「Yo、プロジェクトを作ったよ、全てを注いだんだ。このアルバムを作るのに全てを注いだ。色々な電話を沢山して、夜更かしを何度もして、ビートを作るのに寝ない夜もあった。全ての曲をプロデュースしてる。自分で全てをレコーディングしてる。ベストなエンジニアを雇おうとしたし、お金もかけた。だからきっと良い作品になってるよ。」とね。

実際今は、作品をみんなに届けられれば、みんなが何を言おうと気にしてないんだ。何が起きるかわからないし。だけど、とにかくみんなに聴いてほしいよ。そして噛み締めてほしい。俺がアルバムを作ったことに感謝してくれるといいな。

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