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「この音楽は自由と癒しをもたらすためにある」
Ric Wilson & Terrace Martin -『They Call Me Disco』

May 09, 2020

ギャング・アクティビティと、犯罪に溢れた街、シカゴは「痛み」から2つの音楽的な側面を生み出した。

一つはChief Keef(チーフ・キーフ)に代表されるドリル・ミュージックだ。痛みを伴う過激な日常を歌う音楽は世界中で人気を博していることはご存知の方も多いだろう。もう一つは、過酷な現実から「癒し」や「希望」を音楽に追い求める側面である。Chance The Rapper(チャンス・ザ・ラッパー)を代表に、ゴスペル・ミュージックを取り入れた多幸感溢れるサウンドで、日常の厳しさを怒りや暴力に変えるのではなく、祈りに変換させてきた。

シカゴ / サウス・サイド出身、現在23歳のラッパーRic Wilson(リック・ウィルソン)は、シカゴのサウンドが上記の2つだけに収まらないことを証明している。勿論、彼が後者の音楽に影響を受けていることは考えられるが、2016年の『Soul Bounce』から見せ続けている「ディスコ・ラップ」を一聴すれば、彼がサウンド面でユニークな立ち位置を取っていることは明確だ。

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Ric は最新作『They Call Me Disco』のプロダクションにTerrace Martin を迎え、西海岸のレイドバック・サウンドを取り込み、その「ディスコ・ラップ」に磨きを見せている。一見、シカゴの危険な日常とは遠い場所で、その音楽は産まれているように見えるが、Ric が決してホームタウンを離れることはない。黒人教会で生まれ育ち、アーティストだけでなく、アクティビストとしても活動するRic の音楽へのモチベーションはあくまで、音楽を通じてシカゴの痛みを「癒し」そして「自由」へと転換することだ。

DJ Booth によるインタビューに登場したRic は最新EPの制作・コンセプトについて、「自由」と「癒し」をもたらす音楽について語ってくれたので紹介していこうと思う。

DJBooth: 『They Call Me Disco』でTerrace Martin とはどのように共演を果たしたの?

Ric Wilson: 俺のマネージャーから繋がったんだ。俺たちのファンは音楽の趣味を共有しているからこの話は持ち上がった。Terrace は本当に誠実な人だよ。

Martin との共演で、クリエイティブにおいてどんな影響を受けた?

Terrace とスタジオにいると、こう思うよ「おいおい、Kendrick のスタジオに入っていた人がここにいるよ!オーケー、ならカマさないとな。彼のエナジーに合わせるんだ」って感じにね。

彼が「Breakin’ Outro」のイントロを流し始めた時思ったんだ「彼の勢いよりもハードなものを出さないと」ってね。過去最高のベスト・ヴァースを書かなきゃって気になったよ。フックをより歌うことを心がけたし、今までよりヴォーカルを歌うことを意識したね。緊張感を持ちながら、とてもリラックスできていたよ。その状態こそがライター、ラッパーとしての自分の自信を高めるから。

あなたはディスコ、そして黒人音楽、文化的な伝統に敬意を示して、全てを尽くしたきたと思うけど、『They Call Me Disco』でも同じようにそれらの慣習を引き継いでいる?

素晴らしい質問だね。このプロジェクトはより進歩的な作品なんだ。俺とTerrace で作品を作るんだから、シカゴとLAのダンス・シーンを感じられる作品にしたかった。二つを繋ぎ合わせたかったんだ。フュージョンって感じだ。もしドラゴンボール・Zを見たことあったら、悟空とベジータが融合するのを知ってるだろ。あれを音楽で表現したかった。

特に今回は「Don’t Kill The Wave」、「Breakin’ Rules」でそれを実現しようと努めた。黒人らしさを持ち込みたかったんだ。Frankie Knuckles のハウスや、DJ Quik のG-ファンクを感じて欲しい。その二つが組み合わされているような、今回のアルバムにはそう言う曲が大半を占めてる。

ディスコはオーラさ。ディスコは疎外された色々なカラーの人たちと、クィアの人間によって生まれた。俺は自分の音楽でそれを表現したい。だから、俺はディスコを続けるのさ。疎外された人たちをインスパイアしたいから。

あなたは出身であるサウス・サイドをプラウドしているよね。シカゴという土地は新作にどんな影響をもたらしてる?

俺は自分がハウス・パーティに行く姿を思い浮かべたんだ。音楽、そしてストリート・フェスティバル・パーティ。「Move Like This」「Don’t Kill The Wave」はそれらに強く影響されてる。誰の話題にも挙がらないけど、シカゴは豊かなバンドの歴史を抱えてる。俺とTerrace はこのプロジェクトのライティングに取り掛かる際に、そのことを深く話し合った。
その土地を表すような作品を作りたかったんだよ。俺はウエスト・コーストで最も偉大なプロデューサーの一人に出会った。だけど俺はここにいるんだ。シカゴをぶらついてるのさ。

俺とTerrace がこのアイデアを思いついたのは去年の11月。俺はファミリーと一緒にいて、シカゴのサウス・サイドでリリックを書いてた。LAのスタジオではなくね。だから今作のリリックをインスパイアしてくれたのは、俺の身の回りの人たちなんだ。

2018年のインタビューであなたは「ムーブメントの代弁を行う一方で、パーティやただ楽しむことを歌ってもいいんだ。だって楽しむことも、自由でいる権利も俺たちにはあるから。」と語っていたね。「自由」や「楽しむ」というテーマは『They Call Me Disco』にも影響している?

俺が音楽を始めた頃、シカゴではドリル・ミュージックが爆発的な人気を手にしていた。俺はその頃、2015年に政治的な運動をオーガナイズしていた。プロテストや、スピーチ、ラップで訴える人たち…音楽を通じて人に自由を感じてもらうためにはどうすればいいか。俺はまだそれを模索してる。

そもそも「自由」っていうのはどういう気分のことを言う?きっと自由というのはダンスをしているような気分だと思うんだ。それってパワフルなものだよね。

この音楽は自由と癒しを与えるためにある。でも、「何も心配ない」とは言わないつもりだよ。『Soul Bounce』の制作をしてた頃、俺はこう考えようとしていた。「プロテストの場で『ここは俺の居場所だ』って思ってもらい、行進したくなるようなパフォーマンスはどうすればできるだろうか」ってね。今作はツーステップと、行進が同時にできるような作品になってるよ。

運動のオーガナイザーとしてのバックグラウンドを踏まえて、2020年における「自由」とはあなたにとって何だと思いますか?

わからないよ!経済的な自由を考えても、結局は限られた人にとっての自由になるし、健康についてを考えても、そこには同じような自由があるでしょ。

知る必要はないのかもね。常に追求し続けることができるし。

間違いないね。自由といえばD’Angeloの『Voodoo』かな。あのアルバムは最高だよ。

時には既存の規則や条件を変えるという方法で、疎外された人々に答えを与えることもできるよね。

ああ、本当にそう思う。疎外された人たちは問題について言及して、考えるための自由がない。なのに、他の人たちは常に問題についての答えを求めてる。

『They Call Me Disco』の中で、一番ファンに見せるのが楽しみな作品はある?

「Move Like This」だね。この夏に一人きりでパーティするにはもってこいの一曲だよ!

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