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Aminéがニューアルバム『Limbo』に込めた想い|大人になろうともがいた2年間を語る

August 13, 2020

先日、待望のセカンドアルバム『Limbo』をリリースしたポートランド出身のラッパーAminé(アミ―ネ)。現在26歳の彼は2016年にシングル「Caroline」、翌年の2017年にはファーストアルバム『Good for You』をリリースし一躍脚光を浴びたが、前作の『ONEPOINTFIVE』からは約2年間もの間アルバムについては沈黙を貫いていた。 

「不確かな状況・状態」を意味する「Limbo」というタイトル通り、彼の新作はこれまでのディスコグラフィーよりも落ち着いた印象を見せている。もちろん、世の中の暗い状況を鑑みれば、その空気感に作品が影響を受けることも十分に考えられるが、彼は今作のユニークな作風について、こう語っている。

Aminé : アルバムは文字通りただのサウンドトラックだよ。少なくとも俺のアルバムは、その時々の俺の気持ちを表現した人生のサウンドトラックだね。君たちもナイーブになったり、嬉しくなったり、ミスしたりするだろ?『Limbo』は俺が大人になってきているってこと、そして「大人になるのは難しい」ってことを表現しているんだ。何も気にしないで明るいだけじゃダメなんだ。

無邪気で明るいキャラクターで私たちにポジティブな印象と衝撃を与えたラッパーは26歳になった今、「大人」になろうと必死にもがいている。今回は彼がVulture によるインタビューで語った言葉を紹介し、新作に彼がどんな想いを込めたのかを探っていきたいと思う。

ー『Limbo』のタイトルはパンデミックでみんなが行き詰まっている今の時代にぴったりだね。いつ思いついたんだい?

Aminé:実は1年半前だよ。パンデミック前のね。俺は時代に合わせてアクションを起こすのは好きじゃないから、たまたまタイミングが合っただけだね。パンデミックとは全く関係なく付けたよ。

*Limbo = 不確かな状況。宙ぶらりん。

ー今回のアルバムは行き詰まりながらやっと辿り着いたサウンドに感じるね。

A:これは長年俺が感じてきたリアルな感情だね。俺は2年間このアルバムのために何個も曲を書いてきた。でもどうすれば『Good For You』や『ONEPOINTFIVE』のように成功するか分からなかったから苦労したね。今でも自分が大人になろうと頑張る大学生のように感じるよ。もう26歳なのに(笑)。

ー俺も27歳だから分かるよ(笑)。

A:高校生の時は、26になったら奥さんがいて子供がいて、車のある生活をしていると思っていたよ。今は子供の時に考えていた人生観とは全く変わって、26歳の終わりにどうなっていたいかってことだけ考えているよ。それが良いのか悪いのかわからないけど…まだ分からないんだ。自分が何をしたくて、ファンの皆に何を表現したいのか。有名人であれラッパーであれ何であれ、一度大きな舞台に上がると世間は過剰なぐらいに期待するようになる。このアルバムは、俺がただの凡人だってことをみんなに分かってもらうためのものだよ。

ー今の段階では君の答えはなんだい?

A:正直言うと、今の俺の気持ちは「Woodlawn」の曲中でまさに言っていたことなんだ。「黒人全員が救われなきゃ意味がない」ってバースがあったけど、これは俺がまだ家族や友達のためにやりたいことがあって、まだまだ今のキャリアに満足してないってことなんだ。俺はマイケル・ジャクソンやマドンナのレベルまで達してないからね!

ー前作の『Good for You』と今作の『Limbo』の間には3年もかかっているね。もちろんその間には『ONEPOINTFIVE』のリリースがあったけど、これもフォローアップのリリース時期としては少し遅かったように感じるよ。何か特別な理由があった?

A:2作目は本物じゃないといけないっていうプレッシャーだね。まだ俺のことをを見てろよ!って皆にアピールしたかった。あと、大事だと分かっていたからこそ焦ってリリースしたくなかったからね。もちろん俺の世代のラッパー達は2,3週間に1回は新しいことをしてて、スローペースな人もいるけどほとんどの人はそうだ。俺は永遠に皆の中に残るものを追求したかったから、じっくりやることをを選んだね。
2018,2019年の時はまだもっと準備が必要だと思ったんだ。真面目なヒップホップを作るのはもう疲れたよ(笑)。俺はただ楽しむためのラップを作りたかったんだ。一昨年くらいに初めてマリファナを吸って、「じゃあ今作っているのはセカンドアルバムじゃなくて1.5作品目(ONEPOINTFIVE)と呼ぼう」って変なこともしちゃった(笑)。ハワイで2ヶ月くらいかけてミックスを製作したんだけど、でもこれは想像以上に反響が大きかった。世界ツアーもできたし、このおかげで『Limbo』をさらにブラッシュアップしないとって思ったから2019年にはリリースできなかったんだ。そして2020年になったら今度はパンデミックが起きて、もう本当にリンボーしてる気分だよ!

ーアルバムの中で、「ただグレープフルーツを食べることがお金よりも人を幸せにすることがある」と言っていたね。『Good for You』の中の「Money」で「お金は人を幸せにするんじゃなくて、もっと金持ちになりたいと思わせるだけだ」と言っていたこととも繋がっているのかい?

A:これは同じアイデアだけど、グレープフルーツのバースの方がもっとシンプルに表現したね。俺と一緒にLPを作っているコメディアンのJak Knight(ジャック・ナイト)と音楽で何を手にしたいか、どんなキャリアを歩みたいかについて話していたんだけど、その中で音楽は達成感を得られるけどその分プレッシャーもどんどん強くなっていくものだって気づいたんだ。「もっとたくさんのヒット曲を出さないとダメだ」とか…。それで俺が太陽の下で糖分とビタミンDでいっぱいのグレープフルーツを食べているとき、このバースで言ったお金に対する思いが強くなったね。

ー全体的に『Limbo』内の楽曲は『Good for You』よりも意図的に暗いサウンドにしているね。

A:もちろん。俺は似たようなサウンドの音楽を作るのはあんまり好きじゃないんだ。『Good for You』のリリース後に同じようなアルバムを作りたくなかった。なぜかって?俺がやりたくないって思ったからだよ!絶対にね!だからおれはアーティストとして挑戦して、今までとは全く違うサウンドでも良い曲を作れるって証明したかったんだ。薬でバッドに入った時に暗いサウンドを作るってことじゃないよ(笑)。『Limbo』は俺の気持ちをそのまま表現したから、暗いサウンドになってる。アルバムなんて文字通りただのサウンドトラックだよ。少なくとも俺のアルバムは、その時々の俺の気持ちを表現した人生のサウンドトラックだね。『Good for You』は気分が乗ってたから楽しいサウンドになった。君たちもナイーブになったり、嬉しくなったり、ミスしたりするだろ?『Limbo』は俺が大人になってきているってこと、そして「大人になるのは難しい」ってことを表現しているんだ。何も気にしないで明るいだけじゃダメなんだ。もっと真剣さを伝えないといけないんだ。

ースタイルが変わったことで、ファンから反発があったりする?2016年にリリースした「Caroline」の明るくて元気なイメージからは随分変わったと思うけど。

A:ファンは、好きなアーティストが作った曲のおかげで初めて存在するんだ。そしてそのファンは、ライブの最前列にきてくれたり、マーチを買ってくれたり、1日だけのファンだったり、いろんな奴がいる。ただ「Caroline」のファンでこういう音楽をもっと作っていほしいと思っているようなリスナーは、中途半端なゴミリスナーだね!あいつらは本当のファンじゃない。アーティストにそんなことを望んでいるなんて、俺にとってはばからしいよ。俺は成長して常に変化しているようなアーティストをリスペクトしてるんだよ。俺が中学生の時、『808s & Heartbreak』はリリースされたばかりでたくさんの反発を受けてた。でも数年後、嘘だったかのように高く評価されていて、「他人の考えなんて気にする必要ない。自分がその時すべきだと思ったことをしよう。それが結局幸せに繋がるし、誇りに思える日がいつか来るから」って思ったね。スタジオで同じような楽曲を新しく作るなんて俺には無理だね。憂鬱だよ。なんでロボットがやろうとしてることをわざわざするの?って思うよ。

ーアルバムでは、コービーの死について語ったJak Knightとの楽曲「Kobe」があるね。コービーの死についてはどう感じた?

 A:彼は若者たち皆の人生の一部だったよ。コービーは俺たちにとって第2の父だったよ、特に俺みたいに昔バスケをプレーしてた人にってはね。あの曲では彼の死をどんな風に感じたかをそのまま表現したよ。実感が沸かなかった。改めて人は歳を取っていると思い知らされたね。俺たちは本当に大人になっていっているんだ。人生は変化し続けている。物心ついたころからコービーはいたから、彼のいない世界を想像できないよ。彼の死を知った日には「8(コービーの背番号)」のタトゥーを入れたよ。

ー「Mama」の中の母親に感謝するバースではかなり興奮しているね(笑)。母親との関係はなにか変化してるかい?

A:本当に、本当に最高だね。家を離れて自分でお金を稼ぎ始めてやっと両親に感謝するようになったよ。大人になって家を離れると、育った時の小さな出来事を思い出して寂しくなるよ。でも、一度家を離れるとお互いが恋しくなるから、良い距離感なのかもね。他人が自分のためにしてくれたことに本当に感謝できるようになるよ。
俺の両親はアフリカ人だから、地獄のように厳しかったんだ。だから大きくなるにつれて両親のことがあんまり好きじゃなくなってしまったんだ。厳しいことを言われると、俺は本当に、本当に心の底から腹を立てていた。でも26歳の今になってやっと、感謝できるようになったよ。親が厳しくなかったら今俺は絶対こんな男になれていなかったね。

ー何年か前、 Young Thug(ヤング・サグ)が君のことを”ヤングレジェンド”と呼んでいたよな。このヤングとのコラボ曲「Compensating」には感動したよ。

A:俺はThugが本当に好きだったからそう聞いたときは変な気分だったけど、まず俺のことを知っていてくれるとは思っていなかったね。ラッパーとして特にリスペクトしてた人物だから。コラボは相棒のT-Minus(ティーマイナス)のおかげで叶ったね。俺たちはトロントでアルバムの制作をしていて、その時に彼が「Thugもちょうど同じビートでデモを作ってたぞ!」って。「まさか!」って感じだったね。他の人が俺のビートでプレイする時、普通は伝えたいことが伝わらなくなったり、全然機能しなくなったりするんだ。でもThugの場合は、完全に俺たちの伝えたいことを表現できたね!Thugも自分が製作した同じビートのデモのことを気にせずに、この歌を気に入ってくれたよ。まさに「Compensating – 補い合う」だね。

ーSummer Walker(サマー・ウォーカー)との曲「Easy」も同じように生まれたのかい?

A:彼女とは2018年の夏から連絡を取り合っていたんだ。彼女はクールだし謙虚だし、素晴らしいね。アルバムで彼女とコラボしたいとは思っていたけど、ちゃんとした曲じゃないとダメだと思った。「Easy」の前に実は2曲を彼女に送ったんだけど返信がなかったから、あんまり気に入らなかったのかもね(笑)。「Easy」は彼女が気に入ってくれて、俺のお気に入りの曲の1つにもなったね。

ーアルバムのクローザー曲「My Reality」では、これからの君を模索してるように感じたよ。ミュージシャンになる夢は叶ったけど、今は何か違うビジョンを持ってるのい?

A:そうだね。昔は誰も税金について教えてくれなかったから、ミュージシャンになって税金に対する価値観が大きく変わったと思うよ!(笑)まあ冗談は置いといて、俺は環境が変化したかといって、ビジョンを無理に変える必要はないと思う。そもそもミュージシャンの夢は実現できるって思ってたしね。ただ、「Good for You」を製作していた頃に親友のYosefとJohnと話したことは忘れられないな。おれは赤いメルセデスが買えるようになって、引っ越してきたロサンゼルスであいつらと車に乗っていた。それであいつらが言ったんだ。「信じられないな」って。だって去年は5ドルしか持っていなかったのに、今はメルセデスに乗れるようになったんだ。ありえない。本当にゼロからのスタートだったから、信じられなかったな。

Credit

Writer : Mizuki Yoshida 
Edited by SUBLYRICS

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