Kaash Paige

FLAUNT

ありのままを伝え、高みを目指す | Kaash Paigeがデビューアルバム『Teenage Fever』で証明した変わらない姿勢

August 22, 2020

2001年生まれ、テキサス州ダラス育ちのシンガーKaash Paige(キャッシュ・ペイジ)は19歳という若さでDon Toliver、42 Dugg、K CAMP、Isaiah Rashad など名だたるゲストを迎えたデビュー・アルバムを今月14日にリリースした。タイトルは『Teenage Fever』。「私が今19歳で、ラストティーンだから。10代の今の気持ちを1つ1つの曲に込めた。」彼女がそう語るように、この作品は10代最後の年を迎えた彼女の想い、そして、同世代の若者たちが抱えるフィーリング、特に愛にフォーカスを当てた感情と葛藤を繊細に綴った作品になっている。


シングル「Love Songs」のバイラルヒットを起こした2018年当時から、自身を「Heartbreak Kid」と自称していることを考えれば、今作のテーマがデビュー以来、地続きなものであることは間違い無いだろう。

先行シングル「Jaded」はそのテーマ性を明確に表現していた。Drake の『Scorpion』に収録された同タイトルの楽曲に影響を受けたと彼女が語ることからもわかるように、彼女は人間関係をテーマに「ありのままの感情とその起伏」を歌うことを徹底している。(Drake も自身の作品「Jaded」で、もはや十八番とも言える自身の傷心を披露している)

例えば、リリックに登場する一節「3 dots waiting for your reaction」は、メッセージアプリで「入力中」を意味する3つのドット「・・・」を表したもので、リスナーにとって非常に親密で、多くの人に共通する身近な体験を語っていることがわかるだろう。

“ 共感できるからこそ皆は音楽が好きで、影響も受けると思うんだ。- FLAUNT

家族には理解されない葛藤を吐露し続けてきたKaash Paigeはデビュー・アルバムで同時に高みを目指すことを宣言している。地元テキサスのラッパーDon Toliverを迎えた「Grammy Week」では「私はただ成功を手にしたい。ベントレーに乗り込んで、首元はダイアモンドでいっぱい。」と、成功を渇望する姿を見せる。

“ 世界中に私を知らしめたい。「Kaash Paige」なら誰でも知ってるってくらいにね。- DJBOOTH

彼女の勢いはもう否定できない。今作では42Dugg、K CAMP、TDEのIsaiah Rashadを、「Love Song」のリミックスverでは6LACKをゲストに迎え、Don Toliverの作品「Euphoria」ではTravis Scottとも共演を果たしている。彼らとの出会いを彼女はFLAUNTに語っている。

ーDon ToliverとTravis Scottとの「Euphoria」が好きなんだ。どうやってコラボしたんだい?

K:この曲では私なりの「Euphoria – 陶酔」を表現できたと思う。私はよく寮でTravis Scott とDon Toliverのレコードを聴いていて、いつかコラボしたいって思っていた。全く知り合いじゃなかったのにね。だからマネージャーにお願いしてDonとスタジオに入らせてもらって。彼がブースでラップをしてる姿はまるでWayneみたいだった。私はまだ彼がコラボしてくれるかは分からなかったんだけど、彼が来て「頑張ってるみたいだね、君の音楽を聴かせてくれよ」って。

私が「Euphoria」を披露したら、彼に「もう一度」ってお願いされてね。それでもう一回演奏したら「やろう」って。こうやってコラボが実現したの。マネージャーには本当に感謝してる。その後ニューヨークにいる時に彼から「Travis Scottも参加したいみたいなんだけど」って電話があったの。信じられなかった。「あのTravis Scott?」って。マネージャーが私とDonを出会わせてくれたし、彼がスタジオに連れてってくれていなかったたらコラボなんて叶わなかったから。

君たちはどうやって会っていたんだい?

K:彼がRoc Nationにいる時にインスタグラムでDMしてきてくれたの。 私のA&RもDMしてきたから、嘘だと思った。実際に会っていたわけではなかったし、DMをしててもゲームをしているような感覚だったよ。私たちは一緒に夢中になってたんだ。私たちが世界を担ってやるって。

彼のアルバムの「Euphoria」を聴いたとき、どう思った?

K:本当に嬉しかった。「Kaash、ついにTravis ScottとDon Toliverとの曲を出したのかよ」っていうテキサスの皆の反応が嬉しかったね。私たちはずっと本物だし、テキサスのためにクリエイションをするんだ。

6lackとはいつも連絡を取っていて君と仕事をしたいと言っていたみたいだね。どう思った?

K:Melroseを歩き回ってGeniusのインタビューを受けていた時、ツイッターで6lackのツイートを見つけたの。私のアカウント「@kaashmychecks」をメンションしている彼のツイートをね。通知のポップを見た時は誰がしたのか分からなかった。彼が私のことを知ってるはずがないって。親友にも6lackがメンションしてきたって思わず伝えたんだ。そして、曲は本当に最高よ。私たちはレコーディングもしないでお互いを知るためにずっと話していた。トイレから出ようとしたら彼がドアの近くでうろうろしててぶつかったときは笑ったけどね。彼はプレゼントがあると言って葉っぱをくれて、一緒に吸ってコラボについて話したの。最終的には最高なレコーディングができたね。

彼と一緒に製作をして何か学んだことはある?

K:エナジーを放出しすぎないこと。この業界は大変な時期もあるから、私らしくいろって彼は言ったの。音楽を私の芸術、私の子供のように扱え、どんな瞬間の小さなことも大切にしろ、君の音楽は好きだからずっと夢中になってろって彼は言っていた。

13曲36分というコンパクトな構成に、(THCで陶酔するという意での)チルが散りばめられており、終始、浮遊感を感じる今作は、何気ない日常の美しさと、葛藤や感情の起伏と、これからスターになるんだという自信が詰め込まれた彼女の「今」のフィーリングがそのままに表現されている。

思えば、デビューEP『Parked Car Convos』でも彼女は常に自身のありのままの感情を正直に伝えていた。私たちはしばしば、アーティストのリアルな感情とリアルなストーリーに心を惹かれる。「架空のストーリー」よりももっと親密で、自身の体験と重ね合わせて聴くことのできる彼女の作品は、そんなリスナーにとって間違いなく最高の作品になりうるのだ。きっと彼女がスターになろうとも、どんな豪華なゲストと共演しようとも「正直でいる」「日常のなかにいる」というコアは変わらないことだろうと感じさせてくれたアルバムだった。彼女のデビューアルバム『Teenage Fever』はリリースされたばかり。未聴の方は是非チェックしてほしい。

Credit

Writer : Mizuki Yoshida
Edited by : SUBLYRICS

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