『Anniversary』のリリースを控えた数日前に、5年の歳月を超え『Trapsoul』のデラックスverと「Right My Wrongs」のMVを配信したのはデビューアルバムと今作が地続きであることを意味している。例えば、今作をレコーディングしたのは『Trapsoul』のレコーディング・スタジオと同じ場所であるし、この後に紹介するインタビューでも、デビューから歩んだ道筋を思い出したことが今作を制作するきっかけになったと語られている。
Tiller : 今年の初旬かな。1月に娘に会うために家に戻って、4日しか滞在できなかったときだった。弁護士から「話し合いの席が必要だ」と電話が来てね。それとは別に俺は別のアルバムをここ3年ほどずっと準備してて。そのアルバムは『True To Self』をリリースして、その後のSZAとのツアーを終えてからずっと作り続けてる。一息ついて「さあ『Serenity』の制作を始めよう」と思ったんだ。そのアルバムでは心の平穏を手にして、何も気にせずに自由に音楽を作ることができるようになった、そんな自分を表現してる。他人の意見や、そういうことを気にせずにね。
つい先日あなたは『Trapsoul』のデラックスverと、「Right My Wrongs」のビデオをリリースしたね。あのビデオでは最後に女性が君の元を去っていく。そこで「君(女性)はベスト・パートを逃してしまうのか」とあなたが思うシーンもあるね。そこで言う「ベスト・パート」はおそらく『Trapsoul』が評価された後の話だと思う。実際『Trapsoul』がリリースされてから生活は変わった?
Tiller : 間違いないね。俺もよく言うんだけど「もし気分が乗らなくて、スタジオに無理やり入ってるような気がするなら、すぐに出た方が良い」ってね。スタジオを出て、本当にやりたいことをした方が良い。ゲームでもダンスでもなんでもいいから。俺もそうだった。レーベルと契約して、「クソ、生活のためにアルバムを作らないと!」って気になってた。『True To Self』は『Trapsoul』の2年後にリリースしたけど、その間は休みなしにツアーをしていたし、その間を縫って作品を作るから、本当に時間がなかった。ファンは音楽を求めるしね。俺は作品を作る前にコンセプトをじっくり考えるから、すぐには次の作品を出そうとは思わなかったんだ。
– 今作や、特に『Trapsoul』に関して、あなたのリリックは、若い男性の視点から女性との関係性を語るものが多いと思う。例えば「Sorry Not Sorry」がリリースされた時は、俺にピッタリでね…(笑)。どんな経験からこういったリリックが生まれるんだ?何か特定の相手がいるの?新しい関係性?それとも昔の関係を表現してる?おそらく何かを隠喩しているんだろうけど、それは女性かもしれないし、音楽かもしれないし。それとは別のものなのかい?
Tiller : ありがとう。クレイジーなのは実際は対象を意識していないこともあるってこと。後から自分で作品を聴き直して「これって俺が音楽やファンに対して思っていることでもあるな」って思ったりもする。今作の最後の曲「Next to You」は「ある人物の横にいたい」っていう意味なんだけど、同じことをファンにも置き換えることができるし、そう思ってる。色々な解釈をファンに言われて気づくこともあるね。昔の関係も、新しい関係も、乗り越えたいと思っている関係も作品には込めてるよ。