nf zessho bad vibes only review

Album Cover

NF Zessho -『Bad Vibes Only』
ただ死ぬまで生き続ける。そんな人生の中で寄り添うべき「自分」という存在

FEBRUARY 23 2020

Written by momoha

Edited by SUBLYRICS

ラッパーNF Zesshoとは

1993年生まれ福岡市早良区出身。2013年に1stアルバム『Natural Freaks』をリリース、自らのアルバム制作に加えビート提供や客演、楽曲プロデュースなどを手掛ける。
2019年には彼と同世代であり、同じアキラの名を持つビートメーカーAru-2とのジョイント・アルバム『AKIRA』をリリース。翌年には、『AKIRA』にボーナストラックを加えたインスト版を発表し話題をよんだ。

今まで制作した楽曲は数多く、ツイッターでは、「俺の作品群、リリース数が多過ぎて正直追いにくいかもですが…気になったものだけでも楽しんでもらえたら幸いです。」と投稿しているほどである。そんな幅広く音を操る秀才が2018年9月『R.I.P NFZ』から1年ぶりとなる2019年9月にリリースしたアルバム『Bad Vibes Only』。

(Album Cover)

「日々は最悪」

そんな溜息交じりの一言から始まった全9曲には、Zessho自身がプロデュース(9曲目” After 10 Laps “はCRAMによるプロデュース)した、哀調漂うLo-Fiビートとメッセージ性の強いリリックで、躁鬱の表裏一体がストラグルに昇華されており、過去作で既出された事柄に加え、新たな「挑み」を感じられる内容となっていた。 

聴き込めば聴き込むほどにポジティビティが浮上するこの作品だが、特にアルバムの序盤で断片的に耳に溶け込む言葉からは、受け入れがたい欲求や感受性のトーンが作り出した「心の影」が垣間見えるなど、心身的な破滅やイルネスが宿る虚無感が漂い、耳をふさぎたくなる瞬間が多く有ったのも確かである。


” うらぶれてる 全部くだらないが振る舞いはFunny

だってみんな言う「人生は素晴らしい」

聴き飽きてる でも水差すのもなんか悪い

俺はそう思わないが人生は素晴らしい “

Darjeeling

” 一人で戦うべき時には孤独に立ち返り歌う

俺はリリックを書いて探す本当の自分の姿 “

BUSTED!!


” 全てに疲れ今日が終わっていく

他人を許す事を覚えたばかりに 俺が俺を保てなくなり直に消えていく “

Butterfly Effect

 

ありのままの自己の受容と
影の価値が導く癒し


” 捻るダイヤル 導き出すナンバー“814”

そのケースの中身ならパルプ・フィクション

どこで何を食らってようが俺は逃げられない俺から “

Sink into the Floor

” 死ぬ気なんてないのに死にたさが蝕むような夜は

自分が生きるべき正しい生き方を知るためにあって “

Paradise

心の影の存在が明かされ中盤に差し掛かった頃に彼は、変遷する凹凸の日々から来る心に刻まれた痛々しい痕跡や自分自身が持つ心の影と、それらを形成する複雑性から目を背ける事で、人生における「柵」から抜け出せない自分の存在を確認する。そこで彼は何よりも避けることの出来ない「自分」に気付くわけだ。

毎朝起きては死に近づき」
そんな終わりにただ向かい続ける人生のなかで彼は一つのことに気づく。

それは「死ぬ気なんてないのに死にたさが蝕む夜は 自分が生きるべき正しい生き方を知るためにあって」と彼が語るように「死にたさ」や「暮れ惑う夜」の中にさえも価値を見出すことだ。
心の影から誘発される、灰色で震える時間さえも有意義な悟りとして綴られている事からもわかるように、ありのままの自分の存在や自分が抱える心の影を否定的にとらえるのではなく、むしろ「その深い意味に気付く事こそ」が真の癒し、セルフケアである事を示唆していた。

目指すべきさらなる高みへ


” 明日以降の不可能 それを可能に変える為に今はこれをフロウ

同じように巡る日々や行動 別の視点で浮かぶ新しい意味や感動

“ 要は恐らく気の持ちよう ” “

Angelus


” 何に怒りなぜ腐る ワケを消化して昇華 それの繰り返し

一人たまに振り返るが この道はもう既に正しいとか間違いのその先 

それぞれの都合孕み動く街の人波 “

After 10 Laps

 

ありのままの自己の受容と影の価値から真の癒しを得た物語の終盤では、さらなる自己の高みを目指し繰り出された「挑み」にフォーカスされていた。

アウトロのトラック(” Lucy’s Outro “)には「現実と理想の不整合」や社会問題を描くUSアニメの(*ボ―ジャック・ホースマン)の会話を組み入れたカラクリが仕込まれている。
「ドラッグの幻覚による毎回5セントの相談料を支払う」シーンを経て、物語は9曲目” After 10 Laps “に繋がる。曲名通り、少なくともAfter 10 Laps(10週後)にしてようやくではあるが、50 Centの” Hustler’s Ambition “のアカペラを含むビートに乗せ、彼は「
時世の価値観より手に取りたい確実な意思 今ハッキリ見えた選び進むべき道」というポジティブな終止符を導き、確実な意思と共に抑鬱状態から抜け出せる仕様になっている。

そんな委曲に食い入ることの出来る本作では、誰もが陥りそうな負の感情がもたらす、メランコリー溢れるやるせなさや難儀をホリスティックレベル(包括的なレベル)で考える事。つまり「限界や欠如も含め受け入れ尊重した癒し」こそが、繰り返しの躁鬱から回復する手立てとなり、さらなる高みへの挑戦が可能になる事が表明されていた。

それぞれのプラットホームの中で感じる一喜一憂の素材は、己の基準で他者の精神的ウエイトを測ること自体が愚の骨頂である事にも気付かされるなど、前述したように、聴き込めば聴き込むほど様々な気付きを与えてくれるアルバムであった。そして、そんな自らの気付きや、経験を基としたロジックを重ねた楽しみ方も、音楽と我々の生活を結びつける一つの醍醐味であるとも感じている。

幅広い域で活躍する彼から今後どのような作品が誕生するのか楽しみで目が離せない。未聴の方には是非聴いて頂きたい作品だ。 

*ボージャック・ホースマン
アニー賞受賞作品。Netflix限定で2014年から配信されていたアメリカの大人向けアニメ。
かつて、誰もから愛される存在であり、ハリウッドのショービジネス界で輝く過去を持つ主人公が、現在はアル中で落ち目の気難しい中年俳優となり、自堕落な人生を歩むなかで絶望と希望を繰り返しながら癒しを見つけ、徐々に回復していくというストーリー。

『Bad Vibes Only』
1993年福岡県早良区生まれのMC / プロデューサーNF Zessho(NF・ゼッショー)が1stアルバム『R.I.P NFZ』から1年ぶりとなる2019年9月にリリースしたアルバム(EP)。

WRITER : momoha
Instagram: @oopss.zzz

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