まずは楽曲の話から。今回の楽曲自体はHeadie OneとFred Again..による昨年リリースされたミックステープ作品『GANG』の収録曲「Judge Me feat.FKA Twigs」が元になっており、この曲の続編的な位置づけということになるだろう(この2曲は続けて聴いてみてもシームレスにつながっていくような連続性をも持っている)。
Headie One と Fred Again.. の二人によるプロジェクトの収録曲であるため、前作ではフィーチャリングという形でクレジットされていた FKA Twigs だが、今回は3人の名義が並列に並べられた形となった。 そもそも前作は、ミックステープ作品『GANG』の中でインタールードとして位置づけられていたトラックであるのだが、Headie One のようなUKドリルシーンで活躍する存在が、元々インディ且つオルタナティブな存在である FKA Twigs と合流したこと自体は、このミックステープ作品の中でも、ひときわ特徴的なことの一つとして、リスナーに記憶されていただろう。
実際、『GANG』というミックステープ作品自体が、UKドリルの枠を超えた、多彩なサウンドで作品全体の展開を演出するような作品だった。寧ろ、彼ら二人としては、その作品全体の展開の一部であった、せっかくのコラボレーションをもう少し拡大したいという思いがあったのかもしれない。もしくは、前作「Judge Me feat. FKA Twigs」自体が、今回のプロジェクトのための準備だったようにすら思える。
そういった Headie One と Fred Again.. の音楽的な文脈がある一方で、自身のインスタグラムにて FKA Twigs は、今回のプロジェクトが彼女にとって非常に個人的で特別なものであるともコメントしている。さらに、彼女が楽曲だけでなく、ミュージックビデオにおいても、今回の作品に創作面で積極的にかかわっているのは明らかだろう。何を隠そう、本楽曲のミュージックビデオを、マドンナとのMV仕事や、ビヨンセ『Black Is King』への参加も話題となった Emmanuel Adjei と共同で監督したのが、他でもない彼女なのである。
これは、ミュージックビデオにも顕著だ。例えば、彼女が自ら監督している作品に目を向けてみても、「Pendulum(2015)」では、自由を奪われた彼女の姿(全身がロープでつるされたり、彼女の長い髪がマリオネットのように操られたり)と、解放を示すダンスが見られ、「Home with You(2019)」でも、ナイトクラブから抜け出し、ドライブをしながらダンスをする姿や、ラストにて、彼女の腹部の皮膚に眼球が埋め込まれている奇妙で少しギョッとする描写がみられる。無機質に表現される束縛、ダンスによって表現される解放、そして肉体のフィジカルな感触、美しさと不気味さ。