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We Don’t Care 

Album : The College Dropout
Track : 2
Year : 2004
Produced by : Kanye West

2004年リリース、Kanye West (カニエ・ウエスト) のデビュー・アルバム『The College Dropout』から” We Don’t Care “を紹介します! 

『The College Dropout – 大学中退』と題されたアルバムは、その後、3作目の『Graduation – 卒業』まで一連のシリーズとされ、ジャケットのクマさんと共に続いていくのですが、今作はそんな” クマさん3部作 “の序章であり、カニエのデビュー・アルバムでもあります。

カニエはこのアルバムについてMTVのインタビューでこう語っています。
「アルバムのタイトルは「大学中退」っていうんだ。
このアルバムで俺が言いたいことは” 決断は自分自身で決めろ “ってこと。社会に「これがお前のやることだ」なんて言わせちゃダメだ。」

彼は20歳の時に、シカゴ州立大学からドロップアウトしています。その後Jay-Zのロカフェラ・レコードと契約を果たすという成功が彼を待っているワケですが、彼はその経験を踏まえて「学校に縛られずに、自分自身で道を決めることが重要なんだ」とメッセージを送っています。

これは日本においても言えることですが、学校教育の縛りの中では、子供達の個性や、クリエイティビティは十分に発揮されません。それどころか、個性的な生徒は、学校側から毛嫌いされることも少なくないでしょう。
そんな環境の中で無理に縛られる必要は一切ないんだと。周りがどれだけ「学校に行くこと」が当たり前だと思っていて、どれだけ説得してこようとも、人生の選択肢は無限に広がっています。そんなメッセージを彼は、アルバムを通して伝えてくれます。

今回紹介する一曲” We Don’t Care “は、貧困に苛まれる黒人たちが、ドラッグ・ディールなどの犯罪行為に手を染めざるを得ない現実。そんな厳しい現実を必死に生きる同志たちに送るエールを歌った一曲。
「誰に何と言われようとも、俺たちは気にしねえ」というラインが印象的で、豊かな生活を送る人々には理解できない苦しみや、逆境の中で、彼が育ってきたんだ。というバックグラウンドが見えてきます。


[Intro]
Oh yeah…
I’ve got the perfect song for the kids to sing…
子供たちの合唱にピッタリな曲を作ったぜ

And all my people that’s-
俺の仲間たちはみんな –

 

 

[Chorus]
Drug dealin’ just to get by
稼ぐためにドラッグ・ディールをしてるんだ

Stack your money ‘til it get sky high
空高く届くまで、金を積み上げて

We wasn’t supposed to make it past 25
俺たちは25歳になれるとも思われてなかった
(貧困に襲われているインナーシティに住む男性は25歳まで生きられないことが多いと)

Joke’s on you, we still alive
ジョークだよ、だって俺たちまだ生きてるだろ

Throw your hands up in the sky and say
手を空に掲げて、こう言うのさ

“We don’t care what people say”
「何と言われようと、俺たちは気にしねえ」ってな

 

 

[Verse 1]
If this is your first time hearin’ this
もし俺のラップを初めてこの曲で聞くなら

You are about to experience somethin’ so cold, man
お前は超イケてる経験をするんだろうな、そうだろ
(” Cold “はイケてるという意味がありますが、同時にこの曲では世界がいかに「冷たい (Cold) か」も語られています)

We never had nothin’ handed, took nothin’ for granted
俺たちには何も無かったんだ、当たり前のように手に入れれるモノなんて何もねえ

Took nothin’ from no man, man, I’m my own man
恵んでくれる人なんて誰もいなかった、俺は自分自身で掴んできた

But as a shorty, I looked up to the dope man
でも若い男として、俺もドラッグを売ってるやつに憧れてたんだ

Only adult man I knew that wasn’t broke, man
一文無しじゃねえ奴っていったら、そいつらぐらいしかいなくてさ

Flickin’ Starter coats, man, man, you don’t know, man
Starterのコートをキメててさ、なぁ、お前にはわからないよな
(ドラッグ・ディーラーだけが、イケてるジャケットを着ることができたんだと。少年だったカニエがそんな彼らに憧れるは必然なんですね)

We don’t care what people say
誰が何と言おうが、俺たちは気にしねえ

This is for my niggas outside all winter
この曲は、真冬に外で凍えてるお前らに送るぜ
(ドラッグを売るために、冬中、街角に立つ彼らにエールを送ります。また、家のない人たちへのエールとも取れます)

‘Cause this summer they ain’t finna say, “Next summer, I’m finna”
だって夏に言えないだろ「来年の夏まで、大丈夫だ」ってさ
(夏の稼ぎだけでは、生きていけない。シカゴの寒い冬でも働き続けなければなりません)

Sittin’ in the hood like community colleges
コミュニティ・カレッジみたいにフッドで座り込んで
(大学とフッドを比較しています。大学での学びと、フッドでドラッグを売る実用的な学びのうち、カニエは後者を評価しているのかもしれません)

This dope money here is Lil’ Trey’s scholarship
このドープ・マネーは、偉大な俺の奨学金ってワケさ
(” ドープ・マネー “はドラッグで稼いだお金のこと)

‘Cause ain’t no tuition for having no ambition
学費が払えなければ希望なんてないだろ

And ain’t no loans for sittin’ your ass at home
お前らが居座ってるような家のローンは、俺には払えねえし

So we forced to sell crack, rap, and get a job
だから俺たちはドラッグを売ったり、ラップをせざるをえないんだよ、そうやって職を得てる

You gotta do somethin’ man, your ass is grown
何かを成し遂げないといけねえ、お前ももう大人だろ

 

 

[Chorus]
Drug dealin’ just to get by
稼ぐためにドラッグ・ディールをしてるんだ

Stack your money ‘til it get sky high
空高く届くまで、金を積み上げて

(Kids! Sing! Kids! Sing!)
(子供達よ!歌うんだ!)

We wasn’t supposed to make it past 25
俺たちは25歳になれるとも思われてなかった

Joke’s on you, we still alive
ジョークだよ、だって俺たちまだ生きてるだろ

Throw your hands up in the sky and say
手を空に掲げて、こう言うのさ

“We don’t care what people say”
「何と言われようと、俺たちは気にしねえ」ってな

 

 

 

[Verse 2]
The second verse is for my dogs workin’ 9 to 5 that still hustle
2つ目のバースは仲間達に送るよ、9時5時の仕事を精一杯やってるお前らさ
(1バース目では、ドラッグ・ディーラーにエールを送っていた彼ですが、9時〜5時のフルタイムの仕事を頑張っている人たちにも同じようにリスペクトを送ります)

‘Cause a nigga can’t shine off $6.55
だって$6.55っきりじゃ輝けないもんな
(アルバイトの時給のこと。彼らがどれほど精一杯働いても最低賃金では、満足できる生活を手に入れることはできません)

And everybody sellin’ makeup, Jacob’s
だからみんな” メイク “を売ってるのさ、Jacobみたいにな
(自分を着飾るメイクや、ジュエリーのことですね。” Jacob “は時計などジュエリー類を販売しているブランド” Jacob & Co “のこと)

And bootlegged tapes just to get they cake up
テープをコピーしたりしてさ、それも全部金が欲しいからだよ

We put shit on layaway, then come back
欲しいもんを予約して、取りに行くためにさ

We claim other people kids on our income tax
俺たちの所得税で子供達が生活できるようにすべきだろ

We take that money, cop work, then push packs to get paid
俺たちで 金を手に入れて、仕事にもついて、葉っぱを売って

And we don’t care what people say
誰が何と言おうが、俺たちは気にしねえ

Momma say she wanna move South
ママはサウスに引っ越したいって言ってる
(シカゴに越す前に、彼女はアトランタに住んでいたそう)

Scratchin’ lottery tickets, eyes on a new house
抽選券をこすって、新築の家を夢見てるのさ

‘Round the same time, Doe ran up in dude house
そんな時、仲間達は家で女とヤってばっかりさ

Couldn’t get a job, so since he couldn’t get work
まあ仕事がなければ、働くこともできねえよな

He figured he’d take work
だから「仕事」を掴むことに決めたのさ
(ドラッグ・ディールのこと。雇用がないので、自分で仕事を作ることでしか生きていけません)

The drug game bulimic, it’s hard to get weight
ドラッグの世界は「過食症」さ、太るなんてありえない
(「過食症」は日々の食事のコントロールができない摂食障害。毎日、変わらない十分な量の食事を食べられないドラッグ・ディーラーを比喩で表現しています)

A nigga’s money is homo, it’s hard to get straight
黒人達のお金は「ホモ」なのさ、ストレートにはならない
(黒人達は真っ当な仕事(straight)仕事では、お金を手に入れることはできません。ドラッグ・ディールなど普通の仕事とは違う方法で生活をしています。普通な仕事に対して、犯罪に手を染めている彼らの仕事を” ホモ “と表現しているワケです)

But we gon’ keep bakin’ til the day we get cake
でもケーキを手にするまでは、俺たちは焼き続けるぜ
(” Cake ” = お金を意味するスラング。ドラッグ・ディールでお金をメイクすることを、ケーキを焼くことに例えています)

And “we don’t care what people say”
だって「俺たち、何を言われても気にしねえ」から

 

[Chorus]
Drug dealin’ just to get by
稼ぐためにドラッグ・ディールをしてるんだ

Stack your money ‘til it get sky high
空高く届くまで、金を積み上げて

(Kids! Sing! Kids! Sing!)
(子供達よ!歌うんだ!)

We wasn’t supposed to make it past 25
俺たちは25歳になれるとも思われてなかった

Joke’s on you, we still alive
ジョークだよ、だって俺たちまだ生きてるだろ

Throw your hands up in the sky and say
手を空に掲げて、こう言うのさ

“We don’t care what people say”
「何と言われようと、俺たちは気にしねえ」ってな

 

 

 

[Verse 3]
You know the kids’ gon’ act a fool
子供達がバカみたいに振舞ってるのには気付いてるだろ

When you stop the programs for after school
もし放課後のプログラムを止めてしまったら
(アメリカには自主的に放課後、生徒が学ぶことができるプログラムがあります)

And they DCFS, some of ‘em dyslexic
みんなDCFS行きだよ、何人かは文章すら読めねえ
(DCFC = Department of Children & Family Services のこと。ネグレクトや家庭内暴力などの相談を担当する部署です。きちんと教育が行き届かなければ、文章も読めなくなってしまうと)

They favorite 50 Cent song “12 Questions”
そいつらみんな50 Cent の” 12 Questions “が好きなんだ
(この曲の本当の名前は” 21 Questions “。先ほど「文字が読めない」と言われていましたが、曲名を間違えていることと繋がっています)

We scream: “rocks, blow, weed, park”, see, now we smart
それで叫ぶんだ、「葉っぱを吸うぜ」って、見てろよ、もう俺たちスマートだろ
(ギャングスタLarry Hoversの言葉から)

We ain’t retards, the way teachers thought
教師たちが思ってるように、俺たちはバカじゃねえ

Hold up, hold fast, we make more cash
何とか持ちこたえて、掴みとるのさ、もっと大金を稼ぐんだ

Now tell my momma I belong in that slow class
ママに言ったよ、俺がスロー・クラスにいるってさ
(勉強のできないクラスのことですね)

Sad enough we on welfare, they tryna put me on the school bus
生活保護を受けてるってだけで十分悲しいのにさ、あいつら俺をスクール・バスに押し込もうとするんだ

With the space for the wheelchair
それも車イスのスペースにさ
(学校は、精神的・身体的に何の障害もなかった彼が少しでも変わった言動をすると、障害者のラベルを貼るんだと)

I’m tryna get the car with the chromie wheels here
俺はクロームの車輪のついた車を何とか手に入れたくて
(クロームは車輪の材質のこと。生活費がきつくても、車が欲しかったと)

They tryna cut our lights out like we don’t live here
電気は止められちまうし、あいつらこの家に俺たちが住んでいないと思ってるのかよ

Look what was handed us, fathers abandoned us
俺たちに与えられたものって何だよ、父親は俺たちは放棄した
(カニエの父親は、彼が3歳の時に離婚し離れて行ってしまいます。黒人女性が離婚し、貧困に苛まれながら一人で子供を育てることはよくあります)

When we get them hammers, go on, call the ambulance
もし俺たちが銃を手にしたその時は、容赦しねえぞ、救急車を呼んどけよ
(” hammers “は銃を意味するスラング)

Sometimes I feel no one in this world understands us
時々感じるんだ、誰一人として俺たちを理解してくれる人はいないって

But “we don’t care what people say,” my niggas
でも「誰が何を言おうが、俺たちは気にしない」だろ?仲間たちよ

 

 

[Chorus]
Drug dealin’ just to get by
稼ぐためにドラッグ・ディールをしてるんだ

Stack your money ‘til it get sky high
空高く届くまで、金を積み上げて

(Kids! Sing! Kids! Sing!)
(子供達よ!歌うんだ!)

We wasn’t supposed to make it past 25
俺たちは25歳になれるとも思われてなかった

Joke’s on you, we still alive
ジョークだよ、だって俺たちまだ生きてるだろ

Throw your hands up in the sky and say
手を空に掲げて、こう言うのさ

“We don’t care what people say”
「何と言われようと、俺たちは気にしねえ」ってな


College Dropout (2004)

1. Intro

2. We Don’t Care

3. Graduation Day

4. All Falls Down

5. I’ll Fly Away

6. Spaceship

7. Jesus Walks

8. Never Let Me Down

9. Get Em High

10. Workout Plan

11. The New Workout Plan

12. Slow Jamz

13. Breathe In Breathe Out

14. School Spirit (Skit 1)

15. School Spirit

16. School Spirit (Skit 2)

17. Lil’ Jimmy (Skit)

18. Two Words

19. Through the Wire

20. Family Business

21. Last Call

 

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