The Internet(ジ・インターネット)とは?
5人組バンドが織りなすアーバンサウンドに迫る

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みなさんはThe Internet (ジ・インターネット)をご存知でしょうか? 日本、世界中で人気を飛躍的に伸ばしているLA初の5人組バンドがこのジ・インターネットです。アーバンファンク・R&B・ソウルのジャンルで最も存在感を増しているバンドでしょう。
5人で構成されたバンドのメンバーは、Syd(ボーカル・写真左上)、Matt Martians(プロデューサー、キーボード・左下)、Steve Lacy(ギター・真中)、Patrick Paige(ベース・右下)、Christopher Smith(ドラム・右上)で、2011年に結成。

この記事ではインターネットの歴史とこれから、そしてそれぞれの活動にフォーカスして紹介します。


由来

まず疑問に思うのがそのバンド名 The Intenet の名前の由来についてかもしれません。その由来について、シドは「同じOdd FutureのLeft Brainが記者のインタビューで、どこ出身なんだい?と聞かれることに飽き飽きして、インターネットから来たんだよ。とジョークを飛ばしたのにインスパイアされたんだ」と答えています。

歴史

2011年に結成されたインターネットは、当初Odd FutureでDJとして活躍していたシドが、My Spaceを通じて知り合ったマットと二人組で結成したデュオで、その年にデビュー・アルバム『Purple Naked Ladies』をOdd Future Recordsからリリースします。
デュオ時代からすでにそのセンスと、シドの歌声は一際輝いています。もちろんプロデューサーのマットやメンバーが織りなすサウンドは素晴らしいのですが、インターネットの音楽において特筆すべきはやはり、ヴォーカル・シドの歌声でしょう。
繊細で心地よく、艶やかなサウンドはシド以外には生み出せない唯一無二のもの。
また、デビューアルバムリリース時にはTay Walker(キーボード)もバンドに加わっています。

デビューアルバムで頭角を表しその後もメキメキと評価を伸ばしていく彼らは、2013年にはパトリック・ペイジとクリストファー・スミス、金太郎を迎え、セカンドアルバム『Feel Good』をリリースします。シングル『Dontcha』を筆頭にヒットを獲得します。この辺りから認知度も高くなっていき、マック・ミラーのバンドセットを務めたり活動の幅も広めていきます。

2015年にはギターのスティーブ・レイシーを迎えて『Ego Death』をリリース。このアルバムが世界中でブレイクを果たし、グラミーにもノミネート。この辺りでかなり日本にもファンが増え始めます。
その後、それぞれのソロ活動も精力的に行い、ほぼメンバー全員がソロアルバム・EPをリリース。そして今年2018年には再びバンドとして、4作目『Hive Mind』をリリース。
といった感じで、乗りに乗っている彼らです。次項はメンバー・ソロ活動の紹介です。



メンバー・ソロ活動

Ego Deathリリース後、メンバーが幅広い音楽への興味を持っていることから、バンドとしてのネクストアルバムの製作前に、それぞれがソロ活動に専念します。

・Syd The Kid (シド・ザ・キッド)
本名 Syd Loren Benett(1992年生)

シドは上記のように2011年odd futureに加入し、インターネットを結成。ヴォーカルを務めています。
2017年にはソロ・スタジオアルバム『Fin』をリリース。当初は「インターネットらしくない曲だから他のアーティストに提供しようと思っていた。」と語っていました。よりエレクトロなサウンドに仕上がってますね。
当アルバムはコンプレックス紙やピッチフォークの2017年のベストアルバム50にもランクインする作品に。彼女のクールで繊細な歌声がソロアルバムでも輝いております。

また、客演として、Daniel Caesar、Kaytranada、Isaiah Rashad、韓国のR&BアーティストDeanなど、フレッシュなアーティストたちとも楽曲を制作しています。

DEANとのコラボシングル 『Love』も完成度が高い作品になっていて、Sydが客演として出る楽曲はだいたいハズレがないというくらい本当に良いです。

Sydはグループ唯一の女性ですが、セクシャリティについては彼女自ら

私はすでにカミングアウトしている女性のように、オープンにしたかった、だから公表したの。でも、その声明をするためのビデオをバンドとして作ったりはしたくなかった。世間はそういったホモセクシュアリティについて寛容になっていき始めてるけど、そのムーブに貢献できてるとは心から言えないかもね。でも私を助けてくれたりした人たちには本当に感謝してるの、だからそれにお返ししたいって思ってる。

と”Cocaine”リリース時に語っています。アーティストとして大きくなるにつれ、音楽界でも一人のホモセクシュアリティのアイコンになりうる彼女は、世間への理解を手助けしたいと語ります。

・Matt Martians (マット・マーシャン)
本名 マフュー・マーシャン(1988年生まれ)

マットはインターネットの中では最年長1988年生まれ、アトランタ出身の30歳。バンドでは、プロデューサー、キーボードを担当しています。
2017年にソロアルバム『The Drum Chord Theory』をリリース。90’sヒップホップの懐かしさを感じさせるサウンドと、電子音を織り交ぜた作品になっていて、客演はSteve Lacy, Syd, Kali Fauxのみという彼に近いアーティストのみとなっています。
シングル・カットの “Dent Jusay (feat. Syd , Steve Lacy)” は軽快なノリに、シドの滑らかでクールな歌声を乗せたR&B寄りの一曲になっています。個人的なお気に入りは”Southern Isolation”、”Callin’ On Me”。全体的に少し実験的な電子音のサウンドが多い印象で、インターネットではできない、自由な作風という感じで、これはまさに”ソロならでは”ですね。

・Patrick Paige Ⅱ (パトリック・ペイジ)

パトリックはバンドでは、ベースを担当。なんとソロ活動ではラッパーとして楽曲を作っています。
2018年にリリースしたソロアルバム『Letters of Irrelevance』では、ラップを披露しているわけですが、このアルバム、めちゃくちゃ良いです。
彼をバンドで、ベーシストとして使うのはかなり贅沢だなあと感じる内容になっています。ピッチフォークでもスコアは7.5とハイスコア。チル系のメロウなラップになっているんですが、完成度が非常に高いし、客演なしの曲もかなり良いし、Interludeすらハイセンスで引き込まれるサウンドでかなり衝撃を受けました。

ヴォーカルのシドや、プロデューサーのマット、若き天才スティーブの3人に注目が行きがちですが、パトリックもやばいです。
インターネットが好きなみなさんには必ずチェックして頂きたい一作です。

Christopher Smith (クリストファー・スミス)

クリストファーはドラムを担当。メンバーでは唯一”ソロ”アルバムをリリースせず、C&Tというユニットで2017年『LOUD』をリリース。派手さはないですが、エレクトロなサウンドをふんだんに使ったアルバムになっています。

Steve Lacy (スティーブ・レイシー)
(Steven Thomas Lacy-Moya 1998年生)

Ego Deathリリースの2015年から加入したスティーブは、当時17歳(!)で同作でグラミーにノミネート。2017年にソロEP『Steve Lacy’s Demo』をリリース、18年にはRavyn LenaeのEP 『Crush』をオールプロデュース。若き天才です。
Denzel Curry, J.Cole, Kendrick Lamar, Gold Link なんかとも制作を行ったりもしています。
ファッションでも抜群のセンスを発揮する彼は、ルイ・ヴィトンのモデルとしてランウェイを歩いたりもしています。恐るべき20歳ですね。

彼は『Ego Death』リリース時に、キーボードのヘルプ役として参加した ThunderCatと出会い、スタジオに入ったところで才能を発揮し同アルバムでは12曲中6曲のプロデュースに携わり、正式にメンバー入り。そしてアルバムは大ブレイクします。

ソロEP『Steve Lacy’s Demo』は南カリフォルニアのクラシックなソウル・ファンクになっていて、当時高校卒業後の18歳でリリース。パトリックと同様、ギターだけを任せるのは勿体無いといった仕上がりになっています。
それに彼は歌えちゃうんです。優しいソフトな声は彼の作るメロディにはピッタリ。ビデオでもそのハイセンスっぷりを発揮しています。

そして特筆すべきは、このEPのトラックはほぼ全て “iPhoneのみ” で制作されていることです。特別なスタジオや機材を用いずとも、魅力的なサウンドを作る10代の彼には注目が集まり続けます。そのiPhoneのみの制作というインパクトからTED x Teen にも出演します。

-The Bare Maximum 微かなものを最大限に用いる-

彼がクリスマスプレゼントでMacbook Proを欲しがっていたにも関わらず、iPod Touchをもらったことから、MPC beatmakerやGarageBandを使ってビートやトラックを作り始めたと語ります。
周りの友達はMac PCのソフトでやっていたけど、彼にはiPodしかなかったのです。しかし彼をその小さい端末を最大限に利用します。「最初に作ったビートは最悪だったよ。」と語る彼でしたが、音を合わせたり、放課後にビートを作ったりしているうちに徐々に上達したと語ります。
またグラミーにノミネートされた『Ego Death』のうち数曲は彼がプロデュースしたものですが、その曲もこのiPhoneやiPodから生まれたと語ります。まさにBare Maximumということですね。周りがpcを使っているから欲しがっていた彼ですが、それがなくてもあるものを最大限に使うことで成し遂げることができたんです。

 


-そして各々がソロアルバムをリリース後、2018年『Hive Mind』をリリースします。1曲目のタイトルは ” Come Togehther “。各々の活動を経て集まります。各々のソロアルバムを聴いてもわかるように、それぞれがソロのアーティストとして非常に高質な音楽を作れる5人組が、集まったオールスター集団というわけです。-


番外編(元メンバー)

・Tay Walker (2011-13)
キーボードを担当していたTay Walkerは脱退後『25Had』『One Way Street to Nowhere』をリリースしていて、ソロでの活躍を続けています。
Domo GenesisとのGenesisの収録曲 ” Wanderer “は特にオススメです。

・Jameel “KiNTaRO” Bruner (2013-16)
名前の”金太郎”からもうすでにキャラが濃いんですが、なんとこの人 ThunderCatの実の弟でしてかなり驚きました。2013年からTay Walkerが抜けたポジション、キーボードとして加入します。
“オンナ=女”と書かれたキャップを被っていたり、かなり個性的で、かつブルーナー一家の末っ子という経歴から今後の活躍を期待せずにはいれません。
ソロの活動に力を入れるため16年には脱退してしまいます。その後アルバム『Command Existential』『Existence Precedes Essence』をリリースしています。


2016、2018年には来日を果たし、どちらもすぐにソールドアウトになり。日本での人気は他の国に比べてもかなり高いものであるでしょう。
日本とインターネットとの関わりでいうと、モデルの水原希子はインターネットと交友があり、Hive Mindのシングルカット” La Di Da”ではビデオにも出演しています。水原希子自身も大ファンであり、友達でもあると語っていますね。

5人それぞれが自分の音楽をソロで表現し、その後メンバーたちが再び集まり制作されたジ・インターネットの4枚目『Hive Mind』はAir Bnbで家を借りて世界各地で制作を行なったといわれています。
今作はよりファンクなサウンドに仕上がっていて、アップテンポな曲が増えた印象でした。仲間意識を感じるアルバムタイトルは彼らの仲の良さも感じます。

それでは最後に最新アルバム『Hive Mind』から”La Di Da”をどうぞ。


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